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「研究室が沸き立った」――AIが作詞、アイドル新曲ができるまで 電通大教授に聞く(4/5 ページ)

» 2017年05月12日 10時00分 公開
[片渕陽平ITmedia]

不思議なフレーズに「研究室は沸き立った」

 AIが作った歌詞を見て、研究室は沸き立ったという。「白い川と落ち合うバラード 初夏のりんごが憧れそうで」――そんなフレーズを、坂本教授は「どこか詩的で、爽やかで、恋が生まれそうに感じる」と評する。「私が歌詞を考え付くかというと、そういう能力は私はない。しかしAI技術を使えば、誰でも作詞者になれる」。

 「にこにこうぱうぱブルーベリー」。そんな不思議な歌詞も飛び出し「研究室のメンバー全員が大笑いした」(坂本教授)。仮面女子の所属事務所からは「意味不明」「支離滅裂」と厳しい指摘も出たが、坂本教授は「絶対に捨てられないフレーズだった」と振り返る。「この部分を残すか消すかの議論だけで、かなりの数のメールのやり取りをした」。

 何とか削除を免れた「にこにこうぱうぱブルーベリー」は、仮面女子のメンバーにも好評だったという。「レコーディングのとき、仮面女子の皆さんが歌詞を見て笑ってしまい、なかなか歌えなかったと聞いている」(坂本教授)。

 一方、ボツになったフレーズもある。「僕のくるみがはち切れそうで」というものだ。「この歌詞は、歌わせられません」と事務所から要望があったという。坂本教授は「逆に私たちからすると、事務所側がそうNGを出したことが発見で、面白かった」と話す。AIは「くるみ」に“変な意味”を込めたわけではなかったが、人間がそれを勝手に解釈した結果だという。

 歌詞のプロジェクトは「人間の創造力を増幅する」狙いがあるという。坂本教授は「『生みの苦しみ』という言葉があるように、人間が持っている創造力は、必ずしもパーフェクトに発揮できているわけではない」と指摘。AIが人間の代わりに仕事をするのではなく、人間の創作活動をサポートする存在にしたいという。「くるみの例は、AIの提案によって人間が想像力を膨らませた結果だと思う」。

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