こうした技術は、歌詞づくり以外ではどう生かされるのか。坂本教授は「オノマトペの数値化技術はすでに企業向けに提供しており、新製品の開発に使われている」という。例えば『ぽふぽふ感』など、これまでにない質感を作るとき、水分量や柔らかさを数値化し、製品の材料、分量を探すのをサポートしているという。
デパートの化粧品売り場などへ導入も見込む。「サラサラとしたファンデーションがほしい」という要望であれば、「サラサラ」という言葉の数値データを基に、化粧品の材料などを調節できるという。
さらに「サラサラ」「ツルツル」などの言葉を数値化し、互いの数値の差を距離に置き換え、ドットマップのように表示することもできる。ユーザーが「私にとってのサラサラはもう少しツルツル寄り」と思えば、オノマトペの位置を動かして調節し、その人が物体に感じる「質感」をマップ上に再現できるという。このマップを使えば「サラサラ」の個人差を解消でき、よりユーザーに合った商品開発につながる。
「高齢者の場合、長時間のテストに参加してもらって回答を得るのは難しい。(この技術を使えば)少ないデータで、個人が物体にどう感じるか分かる」(坂本教授)
「AIは、レコメンドなどの検索・予測技術が得意なために『人間は仕事を奪われる』という方向性の報道が多い」と坂本教授。しかし、坂本教授は「人間の創造力をサポートし、生活が楽しくなる『愛されるAI』を目指している」という。
「ロボットがものの質感を把握し、人間と一緒に何かを触っているときに『ツルツルだね』と言って寄り添ってくれる……そんな風にロボットと“共感”できるようになるのでは」(坂本教授)
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