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「人工知能? 人間が人間を作ろうとしているだけの話です」 楳図かずおさん(79)「わたしは真悟」30年(1/5 ページ)

» 2016年08月31日 08時00分 公開

 コンピュータにたくさん言葉を覚えさせると、ある日、意思を持ち、世界中のコンピュータとつながる――楳図かずおさん(79)が1982〜86年、「ビッグコミックスピリッツ」に連載したSF漫画「わたしは真悟」は、30年前の作品にも関わらず、現代の人工知能やインターネット社会を予言したかのような内容だ。


画像 「わたしは真悟」電子版より

 主人公の小学6年生、悟(さとる)とヒロインの真鈴(まりん)は、町工場の産業用ロボットに興味をひかれ、コマンド入力用のキーボードでさまざまな言葉を入力し、ロボットに言葉を教え続ける。やがてロボットは知能と感情を持ち、自らを「真悟」と名付け、学習・成長していく。

 「鉄腕アトム」など人型ロボットを描いた作品が主流だった当時、あえて産業用ロボットの「成長」や、機械化が変える社会を描き出した楳図さん。30年経った今、現実社会が作品に近づく中で、現代の人工知能やロボットをどう見ているのか。インタビューした。

画像 楳図さん。インタビューは東京・吉祥寺の自宅「まことちゃんハウス」で行われた

それまでのロボット像に「ちょっと反発」

――80年代当時、ロボット漫画といえば「鉄腕アトム」など人型ロボットを描いたものが主流でした。そんな時代になぜ、産業用ロボと人間の関わりをテーマに選んだのですか?

 鉄腕アトムは当時、あまりに先に行きすぎて現実離れしすぎると思ったから。「機械」というイメージの中のロボットなら当時でも身近で、普通に作ってもできそうというイメージがあり、そこらへんをやりたかった。

 「8(エイト)マン」とか「鉄人28号」とか「鉄腕アトム」とか、人型で、理屈なく人間に近い動きや考えができるロボットではなく、「機械」を意識したロボットを描きたいと。それまであったロボットからちょっと反発して、違う視点にいきたいと、ちょっと逆らってみたというところがあるかもしれない。

人間の仕事が機械に奪われる恐怖

――作品では、工場で働いていた悟の父の仕事がロボットに奪われ、父は落ちぶれて飲んだくれてしまいます。

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 当時、人間の仕事がロボットに奪われる恐怖感はあったと思います。昔、僕の田舎にあった踏切には、「踏み切り番」の一家が住み込んでいて、電車が来るとおばさんが出てきて手で遮断機を下ろす仕事をしていたんです。今の遮断機は自動で下りますよね。コンピュータが踏み切り番のおばさんを追いやったのは間違いない。駅の切符切りだって同じです。自動改札によって切符切りの職員が干されているのは間違いないと思う。

 人が減らされ、機械が代わって仕事をするのですごくスムーズに進むけど、首を切られる人もたくさんいるでしょう……という未来予測の意見も当時からあったと思います。悟のお父さんは首を切られ、落ちぶれたけど、真鈴のお父さんはエリートで、英国でリッチな生活をしています。対比させて、違う生活状況を描きたかったんです。

――真鈴の父のような知的労働層は、ロボットやITにより上に上がるけれど、末端の労働者は職を失うと。

 でも、悟のお父さんが好きという読者もいるんです。肉体派で、あまり賢くないんだけど。科学の時代に入ると、野蛮な力強さがうらやましい部分もありますよね。

 今に合わせていけない人の良さもあるので、機械化はしても、どこかに人間らしさの名残りみたいなものを残すことを気をつけて進めないと、機械化に完璧にあわせた進化ってそれでもいいんでしょうか? という疑問もあります。

 ただ、作品の中心は、コンピュータやロボットが未来に向けての進化するさまを描くことでした。

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