マストドンつまみ食い日記
PatreonとPatroNet 新旧パトロンシステム
クラウドファンディングは製品に使われるだけではない。アーティストが作品を仕上げるのを支援したり、創作活動そのものをサポートしたりということにも多く使われている。アーティストだけでなく、プログラマーも同様だ。それを支援する仕組みの中には、マストドンの開発者であるオイゲン・ロチコさんが利用しているPatreonや、mstdn.jpでぬるかるさんが使っていたEntyがある。
参加して得られるものは、自分の名前がサポートページに載ったり、ポストカードをもらったり、チャットができたりといった特典。成果物をいち早く手に入れたりするものもある。
遅まきながら、オイゲンさんをサポートするためのPatreonでのコースにぼくも参加してみることにした。月額1ドルから選べるが、今回選んだのは1つ上の10ドルコース。さらに20ドル、40ドルのコースもある。40ドルになると、オイゲンさん自身によるインスタンス構築・運用のサポートが受けられる。昨日は1日それにかかりきりだったというトゥートもあった。
全てのコースに共通しているのは、ディスカッションボードDiscordへの参加権。オイゲンさんの動向は自身のトゥートやGitHubでも追うことができるが、ここにはまとまった形で書かれているし、参加者がこのプロジェクトにかなりコミットしている人に限定されるため、大まかな動きを追うのには便利だ。
月1ドルのサポートで同様の権利は得られるので、まだの人は気軽に参加してみてはいかがだろうか。違うのは、サポーターの名前がどこに掲載されるとか、そのくらいだ。
サポートした後で思い出した。こういうのをだいぶ前にやったことがある。トッド・ラングレンのPatroNetだ。名前も似ているし、コンセプトはほぼ同じ。
トッド・ラングレンは有名なロックミュージシャンで、パーソナルコンピュータを最初に音楽に取り入れた先進的な人物で、自らコードを書く。Apple II用の音楽ソフトを開発し、CGを使ったミュージックビデオを作成、MP3プレーヤーをバッキングに歌い、アーティストのためのパトロネージプラットフォームを作った。それがPatroNetだ。
PatroNetについてはその前から追っていて、自分もパトロンになっていたのだが、1998年にスタートしたPatroNetでできていたことは、現在Patreonでやっていることとほとんど変わらない。
一般の人がインターネットを使えるようになったばかりでユーザー数も少ない時代だったが、年額40ドルで新曲を聴く権利が得られ、チャットができて、Flashで作られたミュージックビデオを視聴することもできる。まだ制作途中のラフなデモもアップされる。当時はWebではなく、Directorで開発されたプログラムを起動してPatroNetサーバにアクセスしていた。ファンにとってはいいことづくめだったが、PatroNetは大成功を収めることなく終わった。
もっと規模を大きくしようということで合併した企業がインターネットバブルの崩壊の影響を受けて開発・運営のリソースが提供されなくなり、プロジェクトは終了、トッドは「普通のミュージシャン」に戻った。
その経緯は、2002年9月21日のインタビューに掲載されている。ITmediaの前身であるZDNet/Japanに掲載されたものだ。
トッドへの別のインタビューで、これは他のミュージシャンでもできるんですかと聞いたとき、「インターネット上で告知することは無名のアーティストの場合難しいから、ぼくやビル・ラズウェル(彼もPatroNetの参加者だった)のように古いミュージシャンじゃないといけないだろうね、今のところは」と答えた。
時代は変わった。Patreonにはミュージシャンだけでなく、YouTuber、ポッドキャスター、プログラマーなどさまざまな人たちが、それぞれの活動資金を得ている。Entyにはインスタンス管理者によるプロジェクトがいくつもある。
これで夢をかなえられる人がたくさん出てくる。いい時代になったものだな、と約20年前の先行事例をふと思い出して思った。トッドはToo Far Goneなんだよな。いつも。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
マストドンつまみ食い日記
マストドン(Mastodon)をはじめとする、脱中央集権をうたうサービス、アプリ、Web 3.0の動きをつまみ食いする連載です。
この記事の著者
関連記事
こんなメディアも見られています
ITmedia NEWSに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
SpecialPR
本日の新着記事
アクセスランキング
-
1
Google、プライバシーポリシーに「Gmail」「Googleフォト」のデータを広告に使う例外を追加 回避方法は
-
2
「年齢は合ってますが、人間ではありません」 6歳の飼い猫に届いた“進研ゼミの案内” なぜ届いたのかベネッセに聞いた
-
3
「5年でバッテリーが使い物にならなくなる」は本当か テスラ「モデル3」5年目点検で分かったこと
-
4
GMO熊谷代表「社内ホワイトハッカーが事前に指摘」も対策遅れ、国に「能動的サイバー防御」要請 「責任転嫁では」SNSで批判も
-
5
グッスマに不正アクセス、公式EC閉鎖 会員の住所や注文履歴など漏えいか 再開目処立たず
-
6
ジョーシンへの不正アクセス、最大623万件漏えいか 運転免許証2件・マイナカード1件なども
-
7
野村総研、サイバー攻撃時の「能動的なシステム停止」を支援する新サービス
-
8
タイムズカー流出で顧客らが損害賠償求め運営会社提訴へ サイト開設の弁護士が記者会見
-
9
Xの「いいね」長押しで1ドル送金 マスク氏が“投げ銭”機能を予告
-
10
たばこ休憩なき時代の“一服”をどう取るか 温熱と“聞こえない音”で休む、JT子会社のアイマスクを試す
ITmedia NEWS SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
ITmediaNEWSをフォロー
あなたにおすすめの記事PR