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» 2017年08月21日 08時00分 公開

“中の人”が明かすパソコン裏話:日本の常識を世界に 海外で“のぞき見防止PC”が受け入れられた理由

メーカーの中の人だからこそ知っている“PCづくりの裏話”を明かすこの連載。今回は日本ではおなじみの機能が後から海外で流行する理由を紹介します。

[白木智幸(日本HP),ITmedia]

 こんにちは、日本HPでPCの製品企画を担当している白木智幸です。この連載では、PCの周辺機器やパーツ、サポートの秘密、そして次世代のPCなどを広く紹介しています。

 皆さんはiPhoneの電子ウォレット機能「Apple Pay」を活用していますか? 私はフィーチャーフォン(ガラケー)を利用していたときに「おサイフケータイ」をバンバン活用していたのですが、スマートフォンにしてからは電子マネー対応のプラスチックカードをかざすことに慣れてしまい、ほとんど使っていませんでした。

 ところが、最近になってスタートキャンペーンなどに釣られたこともあり、Apple Payを使い始めるようになりました。お店での支払いに携帯電話をかざす、“懐かしくて新しい”感覚を堪能しています。

photo 電子決済のイメージ(楽天株式会社 楽天Edyから引用)

 FacebookやInstagramなど、海外で誕生したものが日本で流行する一方で、非接触型決済のように日本で以前から実現していたものが海外で新たに流行する事もあります。

 実は、省スペースなデスクトップPCや超軽量のノートPC、一体型デスクトップPC(オールインワンPC)といったアイデアも、最初は日本で具体化して海外でも普及した経緯があります。

 日本にはスペースを有効活用したり、効率化したりするタイプのアイデアが豊富です。そういった日本発の技術にインスパイアされた外資系の企業が、その技術を世界に広めているといっても過言ではないでしょう。そういった意味では、私もその片棒を担ぐ1人なのかもしれません。

photo 省スペースデスクトップの一例

 海外と日本では文化も異なりますから、海外で当たり前のことが日本では異なる、またはその逆ということが当然ながら起こります。

世界初の「のぞき見防止機能付きPC」

 ここ最近、日本発のアイデアとして世界に受け入れられたものを1つご紹介します。私がカフェで仕事をしていたとき、近くにいた女性がサイズの合わないプライバシーフィルター(のぞき見防止フィルム)をノートPCのディスプレイに乗せていて使いづらそうにしている姿を見たのです。

photo ディスプレイのサイズに合っていないプライバシーフィルター(イメージ)

 PCを新しい機種に変更してからも、今まで使っていたプライバシーフィルターをそのまま使っていたのかもしれませんし(プライバシーフィルターってちょっと高価なのです)、ディスプレイのサイズにちょうど合うフィルターが手に入らなかったということも考えられます。いずれにしても不便そうだなと感じました。

 他にも、小会議などでノートPCのディスプレイを一緒にいる人に見せようとして装着しているプライバシーフィルターを毎回外している社員の姿を見かけることも。

 こういった体験から「プライバシーフィルター機能をディスプレイに内蔵し、手軽にオンオフできれば便利だろう」と考え、内蔵プライバシースクリーン機能をノートPCに搭載できないか、ということを米国の担当者に共有したことを覚えています。

photo 内蔵プライバシースクリーンのコンセプトスケッチ(筆者が2014年に米国プロダクト担当者向けにスケッチしたもの)

 一部の携帯電話では内蔵型の「のぞき見防止機能」が実用化されていたので、この機能自体は特に目新しいものではありません。しかし、PCにはそういった機能はまだ搭載されたことがありませんでした。

 実はアイデアに結び付く適切な技術がこの時点では見つかっていなかったのですが、首尾よく適切な技術が見つかり、簡単にオンオフできて周りからは見えにくいというディスプレイ技術を導入することができました。

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 試行錯誤を続けて結果的に実現した機能はとても素晴らしいもので、お客さまからの評価も上々です。うれしいことに、海外の製品担当が自信満々に「こんな素晴らしい機能を(私が)開発したのです!」と紹介しているのです。

 何かの製品なりサービスがうまくいくときには、担当者が「自分がこの製品を作ったんだ!」と自信満々にアピールしています。そういった製品なりサービスは大抵うまくいっています。

 ちょうどセキュリティが重要視される中で、背後からののぞき見「ショルダーハック」防止のニーズが高まっていることや、働き方改革によって外出先やフリーアドレス席で手軽に情報を共有しながらブレインストーミングをする機会が増えていることも受け入れやすい要因だったのかもしれません。

 私たちが当たり前に使っている日本初のアイデアや技術は、海外でも流行る可能性を秘めているかもしれません。漠然としたアイデアは紙に書いてみると整理されることもあります。私のように紙に簡単な絵と共にまとめてみると、それが実現に向けての第一歩になるかもしれません。ステキなアイデアが世界に広まることで便利な世の中になればうれしいですね。

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著者:白木智幸(しろき・ともゆき)

日本HP PC&タブレットエバンジェリスト。パーソナルシステムズ事業本部に所属し、法人向けタブレット製品のプロダクトマネージャ(製品企画)とビジネスプラン(販売計画)を担当。PCやタブレットの楽しさや素晴らしさを広くお伝えすることを通じ、グローバル化の進む現代でよりよい働き方を実現するためのエッセンスを提供することがテーマ。


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