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ソニーのオーディオ技術を詰め込んだシニア向け「集音器」

» 2017年11月16日 06時00分 公開
[芹澤隆徳ITmedia]

 ソニーが11月25日に発売する「SMR-10」は、同社が初めて手がけた“集音器”だ。補聴器より安価に提供できるメリットを生かしつつ、独自技術によって差別化。デザインも従来の集音器とは一線を画すものとして、今後確実に拡大するシニア向け製品の市場で存在感を示す考えだ。

ソニーの「SMR-10」。価格はオープン。市場想定価格は税別3万5000円前後と集音器としては高価だが、補聴器に比べれば数分の1レベルだ

 補聴器と集音器は、耳に入れて周囲の音を聞こえやすくする点では似ているが、商品としては全くの別モノだ。補聴器は厚生労働省の認可が必要な医療機器で、厳しい条件をクリアしているのに対し、集音器にはほとんど制約がない。また補聴器は購入時に医師の診断と専門的な調整が必須で導入コストも高いが、集音器は安価で家電量販店やネットショッピングでも販売できる手軽さが魅力だ。

 しかし、機能面では違いも多い。補聴器は、周囲の雑音が大きい場合に人の声だけを聞こえやすく、また必要以上に大きな音が出ないようにするなど安全面に配慮した設計になっている。個人の聞こえ方に合わせて作られるオーダーメイド品のため相応に効果も期待できる。一方、制約がなく誰でも作れる集音器は製品ごとの差が大きい。

ICレコーダーやハンディカムの技術を投入

 ソニーは、集音器にオーディオ・ビジュアル機器の開発で培ってきた技術をふんだんに投入した。キモとなる集音技術はICレコーダーから、自分の声を目立たなくして自然な音にする「マイボイスキャンセル」技術はお馴染み「ハンディカム」シリーズから持ってきたものだ。ほかにも装着性はイヤフォン、簡単操作を実現するインタフェースはシニア層に人気のメモリーカードレコーダーを参考にするなど、実績のある技術を集めて新商品を作り上げた。

 会話や外出時など、利用シーンによる聞こえ方の違いを自動的に調整する「オートシーンセレクト」もICレコーダーの技術だ。例えば交通量の多い場所では騒音が含まれる低域を下げて不快感を和らげる。また会話では人の声を含む中域を聞き取りやすく調整する。利用者がいちいち操作する必要はない。

付属の充電台に操作パネルがある

 個々人の聞こえ方の違いに合わせる機能も設けた。最初に片耳ずつ周波数の異なる信号音(500Hz、1kHz、2kHz、4kHz)を音量を変えながら出し、聞き取りにくかった帯域をオーディオのイコライザーと同様に持ち上げる。帯域のほかにも左右のバランス調整や、耳の形によって個人差のあるマイクのハウリングを抑える機能も用意。作業は音声ガイドに従ってボタンを操作するだけ。全体で5分程度で完了する。

ウェアラブルなお手元スピーカー

 製品や使用者のイメージを左右するデザインにも気を配った。SMR-10は一見、ワイヤレスイヤフォンそのものだ。それも最近のトレンドになっているネックバンド型とし、バッテリーや基板の入るスペースを確保するとともにイヤフォン部分をシンプル化。知らない人が見れば、まず集音器とは思わないルックスに仕上げている。

本体を折りたたみ、付属の充電台に置いたところ

 ユニークな機能として、ネックバンド部に設けた小型スピーカーでテレビの音声などを聞くというものがある。いわば「ウェアラブルな“お手元スピーカー”」(同社)。付属の充電台に光デジタル音声入力があり、テレビと接続するとその音声をBluetoothで送信する仕組み。集音器本体と充電台は出荷時にペアリング済みのため設定の必要はない。ただし、ほかのBluetooth機器とは接続できない仕様になっている点には注意が必要だ。

充電台の背面に光デジタル音声入力
ネックバンド部にあるスピーカー

 ソニーでは、集音器の市場規模を年間10万〜15万台と予測。「お手元スピーカー」に続くシニア向け商材として力を入れていく。メインターゲットはテレビの音や会話が聞き取りにくいと感じているシニア層だが、サブターゲットとして30〜50代を設定。家事をしながら、あるいは子どもが寝ているときでもテレビなどを楽しみたい人たちにも訴求する。また親へのプレゼント需要にも期待しているという。

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