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» 2017年12月01日 09時00分 公開

「昔のニコ動に戻りたい」は叶わぬ夢か 運営とユーザー“温度差”のワケ (2/5)

[村上万純,ITmedia]

唯一無二の存在だった「ニコニコ動画」 ライバルは誰なのか

 ところで、皆さんは「ニコニコ動画」(ここではあえてniconicoではなく、ニコニコ動画と呼びたい)と聞いて何を思い浮かべるだろうか。コメント機能、初音ミク、小林幸子、MAD動画、踊ってみた――人によってイメージするものはさまざまだろう。10年以上ニコニコ動画を使ってきた記者は、初期のニコ動にあった「アングラっぽさ」が結構好きだった。

 ドワンゴのエンジニアがこれまでにないシステムを提供し、そこからユーザーが誰も見たことのない新しいものを作り、世の中に広まっていく――そんな唯一無二の存在だったように思う。今年10周年を迎えたボーカロイド「初音ミク」を世界に広めた立役者でもあるし、“御三家”と呼ばれる「東方Project」「アイドルマスター」「ボーカロイド」関連の動画を始め、ニコ動ならではのネット文化を生み出してきた。

 そんな唯一無二だったニコ動のライバルとはそもそも誰なのか。YouTube、Twitch、ツイキャス、LINE LIVE……さまざまな生配信・動画サービスがあるが、かつての“ニコ動らしさ”を代替できるものはないように思う。ユーザーが他社サービスに乗り換えるのは、「画質や遅延の問題」「生主だともうからない」などもう少し現実的で生々しい理由からなのではないか。

 そして、これらの問題が積み重なり、面白い生主や投稿者が別のプラットフォームへ移行し、ますます勢いがなくなっていくという負のスパイラルに陥っているのが現状だ。

川上会長 ドワンゴの川上会長

 記者発表会では、希望する全員の質疑応答に答えたドワンゴの川上量生会長。会場のユーザーから「niconicoの強みは何か」と問われた際は、「コメント機能。クリエイターが作ったものを発表したときに、すぐ視聴者からレスポンスが返ってくるところが支持されている」と答えた。

 画面上にコメントが流れることで、同じ時間、同じ場所にいなくても、まるでお茶の間でわいわいとテレビを見ているかのように動画を楽しめるのはニコ動の大きな特徴だ。初めて体験したときの衝撃や楽しさは今でも覚えている。

 また、リリース当初は今よりサーバ環境が整っておらず、ログイン待ちの待機列までできていた。大型アップデート直後のオンラインゲームにプレイヤーが殺到したときのように、トップページに「ログインまであと●●人」と表示が出るのだ。画質や遅延どころか、ログインするのに(仮想)行列ができていた。しかし、毎日どっぷりニコ動に浸っていた暇な大学生だったので、当時は特に気にならなかった。

 初めてユーザー生放送に出会ったときの衝撃も忘れられない。なんとなくクリックした放送では、ぼんやりと無言でPC画面を眺める女性の姿。「わこつ」「何してんの?」と流れるコメントにも反応がなく、途中飲み物を一口流し込んだだけで、30分間ひと言も発さず配信は終わった。見ず知らずの他人が日常を垂れ流し、それを友達でもないユーザーたちと眺める。

 「これでコンテンツとして成立するのか」という衝撃(しているのか分からないが)と、「自分と同じようにPCの前に1人寂しく過ごしている人が“イマココ”にいる」という妙な安心感。強烈な原体験だ。それからはゲーム実況やお絵かき配信など、さまざまな生放送を見て、ユーザー同士で交流してきた。公式生放送も、地上波にあまり登場しない出演者が歯に衣着せぬ物言いで難しいテーマに切り込む姿が当時学生だった記者にとっては刺激的だった。

niconico 今のniconicoのトップページ

 ニコ動で見たことのない世界が広がり、大げさに言えば「人生が変わった」という人だっているだろう。そんな何でもありなカオスな空間だった。登壇した川上会長がプレゼンする中、そんな昔の記憶が、走馬灯のようによみがえってきた。何もかもが新鮮で楽しかった、あの時代にみんな戻りたいと思っているのだろうか。

 しかし、“原点回帰”ではビジネスとしてスケールしないのも確かだ。06年末にスタートした「ニコニコ動画」は3年間赤字が続き、10年1〜3月期に初めて黒字化。その後も収益化には苦戦してきた。実際、記者にとって今のniconicoは主に最新アニメの見逃し視聴をするサービスになってしまっており、かつてほどの勢いを感じていないのも事実だ。

 そんな記者のような旧来ユーザーたちは、今回の発表で何に怒り、失望したのか。

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