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「昔のニコ動に戻りたい」は叶わぬ夢か 運営とユーザー“温度差”のワケ(4/5 ページ)

» 2017年12月01日 09時00分 公開
[村上万純ITmedia]

「ニコキャス」が獲得したい10〜20代のスマホユーザー

 ニコキャスの説明をする前に、niconicoの現状をいま一度振り返ってみたい。先述したように、ニコニコ動画は10年1〜3月期に初めて黒字になった。ニコニコ動画の売上高14億2800万円の内、75%(10億8200万円)がプレミアム会員だった。プレミアム会員数も堅調に伸びていたが、16年10〜12月期の連結決算で初めて減少。12月時点で252万人と9月末比で4万人減った。

 そして、先日の17年4〜9月期の連結決算だ。プレミアム会員数は228万人で、前年同期比で28万人の減少。総ユーザーを年代別で見ると、10〜20代が減り、30〜50代が増えるなど高齢化の傾向が見られた。

プレミアム会員 プレミアム会員は減少傾向に

 収益の柱であるプレミアム会員数が減少傾向にある。しかし、今すぐ彼らの要望に応えられる状況ではない。そもそも、画質や重さの問題を改善すれば失った有料会員は戻ってくるのか――そんなジレンマの中、niconicoがひねり出した新たな一手がニコキャスなのだろう。

ニコキャス ニコキャスの特徴

 「『niconico(く)』によってユーザー層の拡大を期待していると言っていたが」――会場で、記者の質問に川上会長はこう答える。

 「niconicoがまだ取れていない、10〜20代の若いスマホユーザー。現状、スマホアプリのクオリティーが低いのも原因だろう」

 企業として、新たなサービスや機能を提案し、ユーザー拡大に注力するのは健全な流れだが、コアユーザーが期待したものとの乖離(かいり)が激しかった。

 ニコキャスは、配信者と視聴者の双方向性を強化した動画・生放送インタフェース。リアルタイム映像合成機能を備え、生放送を始める前にリアルタイムでオープニング映像を挿入する機能や、視聴者向けアンケート・クイズを簡単に出題できる「ニコニコQ」、放送者と視聴者が参加できる「ニコ割ゲーム」などを用意する。カジュアルなゲームを用意したのも、普段ゲームをしないライト層向けのカジュアルなもの。ログインなしで利用できるなど、これまでniconicoに触れてこなかった層を意識したような機能が目立った。

 配信中にPCとスマホカメラの映像をワンタップで切り替えられる「マルチカメラ」や、別の配信を同時配信できる「引用する」などは、「これはいいじゃん」「良い機能」など好意的なコメントが寄せられたが、コメント欄ではニコキャスは全体的に不評だった。

 しかし、ふたを開けると「niconico(く)サービス発表会」の公式生放送は、来場者数10万人以上(通信が不安定だったのもあるが……)で、コメント数は6万件を超えた。Twitterでも「#niconico」「#ニコニコ」が深夜までトレンド入り。反響の大きさや、ユーザーがどれほど「く」に期待していたかも伺えた。期待の高さ故、それを裏切られたときの反動も大きい。

 今回、ニコニコ動画は2度目の「曲がり角」を迎えたのかもしれない。

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