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2年間で売上13.5倍 「主婦イラスト2500円」でも話題、スキル売買「ココナラ」「NOKIZAL」決算ピックアップ

» 2017年12月18日 17時44分 公開
[NOKIZALITmedia]

 スキル売買マーケットプレース「ココナラ」を展開するココナラ(東京都品川区)が12月15日、官報に掲載した決算公告(17年8月31日現在)によれば、当期純損失は7億8500万円の赤字(前年同期は1億9500万円の赤字)、累積の利益や損失の指標となる利益剰余金は7億8500万円の赤字(同4億7800万円の赤字)だった。同社は17年7月に5億8300万円の減資を実施している。

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 ココナラは2012年設立。12年7月からネット上で個人のスキルや経験を売買できるマーケットプレース「ココナラ」を運営している。サービスの提供価格は500円から、初期費用などは不要。17年12月時点のユーザー数は約60万人、累積取引件数は約150万件となっている。16年8月からは非公開無料の法律相談サービス「ココナラ法律相談」、17年3月からは物販サービス「ココナラハンドメイド」も開始している。

photo ココナラの公式サイトより

 資金調達面では、13年9月にニッセイ・キャピタルアドウェイズ他から1億5000万円、15年11月にジャフコSMBCベンチャーキャピタルVOYAGE VENTURES他から5億4000万円を調達している

ここがポイント

 トーマツが発表した、17年の国内テクノロジー・メディア・通信業界の企業の成長率ランキングでは、15年→17年の売上高が13.5倍を記録し、トレタを抑え、1位を獲得したココナラ。一方、今回の決算公告を見ると当期純損失も7.8億円と、まさに“スタートアップ的”な業績になっているので、特に売上高に関して具体的な数字を推測してみたいと思います。

 まずココナラはマーケットプレースなので、基本的な収益は売買成立時の手数料25%ということになります。それに加えて、イラストと並ぶ人気カテゴリー「占い」の電話相談サービス手数料約50%との差額や、「ココナラ法律相談」の弁護士への有料広告売上、物販売上などを上乗せしたものが最終的な売上高と考えられます。

 これらのビジネスモデルと基本収益の前提になる月間流通額の推移を詳しく見てみたいと思います。参考になるのが、16年にココナラが発表した月次流通高推移グラフで、こちらによると過去4年間、月次流通高成長率は約10%前後をキープしているとあります。

photo 月次流通高推移

 確かに、例えば15年7月時点での流通額は約3000万円ですが、16年7月時点の予想額は約8000万円強にまで伸びています(月10%成長を1年続けると約3倍になります)。さらにこのペースをもう1年継続すると、17年7月時点では15年7月時点の約10倍(月間3億円)ということになります。前述したその他事業の売上を加味すると、15年→17年の売上高が13.5倍という数字ともイメージが合いそうです。

 ということで、15年7月期の平均月間流通額は2000万円程度と仮定し、同期の推定売上高は2000万円×手数料25%×12カ月=6000万円と仮定すると、17年はその13.5倍で約8億円ということになります。資金調達時に18年の上場を目指すとの発表がありましたが、このペースで18年も伸ばせれば、規模的にはおかしくないレベルに成長していそうです。

 とはいえ、上場するとなると規模だけでなく、収益性も見られるので簡単ではありませんが、同じくサービスECであり、現在はクックパッド傘下の「サイタ」の微妙な状況と比較すると期待できそうです。

「プロに頼めば3万円のイラストが主婦に頼めば2500円」の是非

 業績については以上の通りですが、ココナラに関していうと別の観点で気になることが11月末に話題になりました。それは、NHKの情報番組「あさイチ」に「ココナラ」が取り上げられた際に「プロに頼めば3万円のイラストが主婦に頼めば2500円でコストダウン」などと表現され、プロの業界の価格破壊につながる懸念がネット上で指摘されたことです。

 本来はココナラの行っている事業や、個人が特技をネットを介して必要な人に提供することは何ら問題はありません。ただ、ココナラの前述データを見ると、15年3月の流通額は2000万円ほどですが、当時の取引件数は1万7600件となっており、平均単価は1000円強ということになります。一方、仮に現在の月間流通額が3億円だとして、現時点でサイトに表示されている月間取引件数は6万件なので、平均単価は5000円程度にまで上がってきていることになります。確かに人気カテゴリーの「イラスト」などであれば、プロとの境界線に触れる“特技”が出てきてもおかしくなさそうです。

 IT技術の進化によって新しい娯楽や個人が能力を生かせる機会、起業できるチャンスも格段に増えました。それ自体は素晴らしいことですし、ココナラのようなそれを支援するビジネスもどんどん盛り上がっていってほしいところです。

 しかしそのようなIT技術の進化のスピードに、過去の環境の“最大公約数”によってできている法律の修正や利用者側の新たなモラルの確立が追い付かず、そのギャップを突く問題が出てくるのもまた事実です。以前のキュレーションサイト問題や、ミクシィ傘下フンザの「チケットキャンプ」がサービスを一時停止した際にも言及されました。

 ギャップにチャンスを見いだすのは、ビジネスの基本戦略の1つですし、人間が完璧な存在でない以上、ルールもまた完璧にはなりづらいところです。それでもココナラのようなサービスが成長したり、チケットキャンプの問題が起きたこのタイミングで、エコシステム全体として、少しでも最適化が進むとよいですね。

ココナラの過去業績、他の企業情報は「NOKIZAL」で確認できます

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《著者紹介》

平野健児。新卒でWeb広告営業を経験後、Webを中心とした新規事業の立ち上げ請負業務で独立。WebサイトM&Aの「SiteStock」や無料家計簿アプリ「ReceReco」他、多数の新規事業の立ち上げ、運営に携わる。現在は株式会社Plainworksを創業し「NOKIZAL」を運営中。

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