理化学研究所の計算科学研究機構プログラミング環境研究チームとドイツ ユーリッヒ研究センター、スウェーデン王立工科大学の国際共同研究グループは3月26日、次世代スーパーコンピュータでヒトの脳全体シミュレーションを可能にするアルゴリズムの開発に成功したと発表した。
脳を構成する神経細胞は、電気信号を発して情報をやりとりする。脳全体で約860億個ある神経細胞同士はシナプスでつながり合い、複雑なネットワーク(神経回路)を形成している。
この神経細胞の電気信号のやりとりをヒトの脳全体の規模でシミュレーションすることは、現在の最高性能のスーパーコンピュータを用いても不可能。しかし今回、同研究グループは新たなアルゴリズムによってメモリの省力化を実現。既存のスーパーコンピュータ上でのシミュレーションを大幅に高速化できたことから、2020年以降に登場するポスト「京」(21〜22年の運用開始を目標に、スーパーコンピュータ「京」の後継機として、理化学研究所が主体となって開発を進めている次世代スーパーコンピュータ)上で、脳全体のシミュレーションが可能だとして期待している。
新アルゴリズムは、シミュレーション開始時にあらかじめ計算ノード間で電気信号を送る必要があるかないかの情報を交換しておくことで、計算ノードが必要とする電気信号のみを送受信できるようにするというもの。その結果、無駄な送受信がなくなり、電気信号を神経細胞に送るか送らないかを判定するメモリもいならくなった。
同アルゴリズムは、脳の情報処理や脳疾患の機構の解明に貢献すると考えられ、神経回路シミュレーションを行えるオープンソースソフトウェア「NEST」の次期公開版に搭載される予定。
この研究は、スイスのオンライン科学雑誌「Frontiers in Neuroinfomatics」(2月16日付)に掲載されている。
(太田智美)
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