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» 2018年04月11日 06時00分 公開

ICO規制、金融庁の研究会で争点に 「壮大なババ抜き」問題はらむ

仮想通貨交換業への制度的対応を検討する、金融庁の研究会では、ICO(新規コイン発行)が争点に。投機目的での購入が相次ぎ一方、ベンチャー企業の資金調達手段として活用できる期待もあり、メリットにも目を向けた規制を求める意見が出た。

[片渕陽平,ITmedia]

 金融庁が4月10日に開いた、仮想通貨交換業への制度的な対応を検討する研究会の初会合では、仮想通貨を使った資金調達方法「ICO」(Initial Coin Offering、新規コイン発行)への対応が大きな争点になった。将来有望なベンチャー企業などが低コスト、短期間で資金を調達し、開発プロジェクトへ充てられる一方、投機目的での利用や、調達した段階で行方をくらます“詐欺的な”ケースが多発しており、規制の在り方が議論を呼んでいる。

photo 金融庁が4月10日に開いた仮想通貨交換業等に関わる研究会第1回

ICOは「仮想通貨の好況を作り出している震源地」

 研究会は、金融学者の岩下直行氏(京都大学 大学院教授)、中島真志氏(麗澤大学教授)ら12人のメンバーの他、日本仮想通貨交換業協会の奥山泰全会長(マネーパートナーズ社長)など10人のオブザーバーが参加。仮想通貨取引所の内部管理態勢や、仮想通貨の価格の乱高下など現状を確認する中で、岩下氏が「ICOが、昨今の仮想通貨の好況を作り出している震源地ではないか」と切り出した。

photo ICOのトークン販売累計額は88.4億ドル(2018年2月19日時点)=みずほ証券の資料より

 ICOは、企業などがトークン(独自の仮想通貨)を発行し、一般の投資家にビットコインやイーサリアムなどの仮想通貨で購入してもらい、資金を調達する手法だ。資金調達の目的やプロジェクトの計画などは「ホワイトペーパー」(新規株式公開時の目論見書のようなもの)に記載して公表し、賛同した人から資金を募る。ホワイトペーパーは、必ずしも公表する義務はない。

 ICOのトークン販売累計額は88.4億ドル(約9400億円)にも上る(2018年2月19日時点、みずほ証券調べ)。岩下氏によれば、ICOが急拡大した2017年1〜5月ごろ、イーサリアムが急騰し、その他の仮想通貨も相次いで値上がりした。投資家がトークン購入のためにイーサリアムを買うためだ。ICOのプロジェクトが相次いで成功、盛んになると、さらに別のトークン購入のためにイーサリアムを買う――という循環が生まれたという。岩下氏は「仮想通貨の現状を考えると、ICOは切り離せない」と断言する。

ICOがはらむ「壮大なババ抜き」問題

 しかしICOは、投機目的での購入、詐欺のようなトラブルが相次いでいるとの指摘もある。トークンには、購入者が支援したプロジェクトの収益の分配が得られる、といった権利が付いたものがある一方、そうした権利や資産の裏付けがないトークンなのに購入されているケースもある。

 一見すると「購入する理由がない」トークンだが、岩下氏は「セカンダリーの市場に売却し、短期間で資金を増やすという投機目的で購入されている」と指摘する。「典型的な金融商品の性格を持っていると考えられる。放置すると、さらに深刻な事態になりかねない」(岩下氏)

 岩下氏が恐れるのは「壮大なババ抜き」だ。何ら権利を伴わないトークンは、最終的に無価値となり、最後に保有していた人が損害を被る。岩下氏は「そうした問題があると認識した上で、日本だけでなく国際的にどう訴えていくか、考えるべきではないか」と主張した。

「メリットにも目を向けた規制を」

 「ベンチャー企業の資金調達手段として有効だと仮定して、ICOの禁止がどれほど企業の海外流出を招くか」――規制を検討する中、そうした注意が必要と訴えるのは、楠正憲氏(Japan Digital Design 最高技術責任者)。楠氏は「日本国内だけで禁止しても、ICOが行われている海外のWebサイトへはアクセスでき、遮断は技術的に難しい」と述べ、「そうした中、どのような啓発が望ましいか、考えるべきだ」と話している。

 みずほ総合研究所の三宅恒治氏(金融調査部長)は「悪い面ばかりが目立っているが、使い方によっては、コアな投資家から迅速に資金を集め、プロジェクトを進められる」といい、日本国内では不足しがちなリスクマネーの確保につながるとの考えを示す。三宅氏は、ホワイトペーパーによる情報開示の義務付け、プロジェクトのモニタリングなどを提案し、“正しい”資金調達の手法としてICOを育てたい考えだ。「ICOのメリットにも目を向けながら規制を設けるべき」(三宅氏)

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