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スパコン「京」の後継機、CPUの試作チップ完成 国際会議で試作機披露へ

» 2018年06月21日 18時46分 公開
[ITmedia]

 富士通と理化学研究所は6月21日、両者が共同開発したスーパーコンピュータ「京」の後継となるスパコンの試作機を開発し、機能試験を開始したと発表した。開発を進めて、2021年頃には“ポスト「京」”の共同利用開始を目指すという。

photo プレスリリースより

 京はスパコンの性能ランキング「TOP500」で2011年6月、11月に2期連続で世界1位を獲得したスパコン。しかしその後は12年6月には2位、同年11月に3位、13年6月には4位と徐々に順位を落とし、2017年11月には10位に転落している。

 これを受け、文部科学省の有識者会議は13年5月に世界一奪還を目指し、総額1000億円規模の開発費を投じて「京」の100倍の性能を持つ次世代スパコンを開発すると発表。同年12月から理化学研究所がその開発主体となった。14年10月には富士通と共同で基本設計を開始し、試作や詳細設計を進めていた。そして今回、富士通がCPUの試作チップを完成させ、初期動作の確認を行ったという。

 ポスト京のCPUには英Armの命令セットアーキテクチャ「Arm v8-A」を採用し、高性能計算(HPC)システムのベクトル処理能力を拡張する「拡張命令セットアーキテクチャ」(Scalable Vector Extension)を実装。幅広いソフトウェアのエコシステムを活用できるようになっているという。

 これを支えるマイクロアーキテクチャは富士通がスパコン開発で培ってきた技術をベースとし、京で実現したメモリバンド幅や倍精度演算性能をさらに強化。深層学習(ディープラーニング)などで重要になる半精度演算にも対応したという。また、最先端の半導体技術で消費電力あたりの性能も高めた。

photo ポスト「京」の主な仕様

 これによりポスト京は、コンピュータシミュレーションはもちろんAI(人工知能)やIoT、ビッグデータ活用などにも利用分野を拡大できるという。試作機は6月24〜28日にドイツで開催される国際会議「ISC2018」に出展予定。

 理化学研究所計算科学研究センターの松岡聡センター長は「今回試作CPUの初期動作が確認できたことで、共用開始までの大きなステップをクリアできた。引き続き研究開発に邁進する」と意気込む。また、富士通の河部本章執行役員専務は「スーパーコンピュータは社会インフラとしての重要性を増してきている。ポスト京ではわれわれが培ってきたあらゆる先端技術を結集して世界最高のスーパーコンピュータを実現することで、未来に貢献していく」とコメントした。

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