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» 2018年06月26日 20時20分 公開

「意外と人間臭い」新型「クラウン」は、トヨタの“始まりの一手”だ

トヨタの新型クラウンとカローラ スポーツは、通信機「DCM」を標準搭載するコネクテッドカー。豊田章男社長は「自動車を作る会社からモビリティーカンパニーにモデルチェンジする」と意気込む。新型車からは、トヨタが目指す未来のモビリティーの姿が浮かび上がる。

[片渕陽平,ITmedia]

 トヨタ自動車は6月26日、高級セダン「クラウン」の新型と、「カローラ」ブランドのハッチバック車「カローラ スポーツ」を発売した。いずれも自動車専用の通信機「DCM」(Data Communication Module)を標準搭載したコネクテッドカー(ネットにつながるクルマ)だ。この2車種を皮切りに、今後日本国内で発売するほぼ全てのクルマをコネクテッドカーにする。

photo トヨタが発売した新型「クラウン」

 同日、イベント「THE CONNECTED DAY」に登壇した豊田章男社長は「自動車メーカーとは異なる考えを持つテクノロジーカンパニーがライバルとして登場し、クルマの未来が大きく変わる局面を迎えている」と話す。

 「大変革の時代を生き抜くために、トヨタは自動車を作る会社からモビリティーカンパニーにモデルチェンジする。モビリティーカンパニーとは、移動に関わるあらゆるサービスを提供する会社のことだ」(豊田社長)

 新型クラウンとカローラ スポーツからは、トヨタが目指す未来のモビリティーの姿が浮かび上がる。

photo イベント「THE CONNECTED DAY」に登壇した豊田章男社長=トヨタのライブ動画より

「意外に人間臭い」コネクテッドカー

 新型車は、例えばエアバッグが作動すると、事故の発生を自動的にオペレーターに通報する(ヘルプネット/緊急通報サービス)。車載マイクから運転手の応答がなければ、その場に緊急車両が急行。さらに、衝突時の車両データから運転手のダメージを判定し、重傷の確率が高い場合、ドクターヘリの出動を要請する仕組みも備える。

photo 新型「カローラ スポーツ」

 また、駐車中のクルマのドアや窓の閉め忘れなどは、運転手のスマートフォンに通知。スマホでドアロックなど遠隔操作が可能だ。万が一、クルマが盗難に遭った場合は、その位置をトヨタのオペレーターが把握し、警備員を派遣する。

 さらに、24時間365日、運転手がオペレーターに相談できる機能を搭載。警告灯点灯時、クルマからリアルタイムで収集したデータを基に、オペレーターが遠隔からアドバイスするサービスも用意する(eケア走行アドバイス)。整備が必要な場合は、オペレーターが販売店への入庫の手続きも行う。

 この他、AI(人工知能)エージェントを活用し、運転手が音声対話でナビの目的地設定やオーディオ操作ができる機能を搭載。走行データに基づき、毎月の安全運転度合いを保険料割引に反映させる自動車保険サービス(新型クラウンのみ)や、メッセンジャーアプリ「LINE」を通じ、クルマのナビに目的地を事前登録したり、ガソリン残量などの情報を得たりできる「LINEマイカーアカウント」も提供する。

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 同社の友山茂樹副社長は「(サービスが)意外に人間臭いことがポイント」と話す。「トヨタがコネクテッドカーで最も重要と思っているのは、24時間365日、お客さまのクルマにつながり、ジャスト・イン・タイムで安心安全を届けられることだ」

 ジャスト・イン・タイムとは、「必要なものを、必要なとき、必要な量だけ」生産する「トヨタ生産方式」を代表する要素で、同社の経営哲学でもある。ただ、ここで言うジャスト・イン・タイムの最終目標地点は、工場のラインオフ(組み立てが完了すること)ではなく「一人一人のお客さま」(友山副社長)という。

 「お客さまの価値観がモノからコトへと広がる中、よりダイレクトにお客さまとリアルタイムにつながることが求められている。より具体的に言えば、クルマとメーカー、販売店をつなぐことだ。それを担うのがコネクテッド技術だ」

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 友山副社長は「トヨタが理想としているのは、情報家電でみられるようなAIが表立ったサービスではない。ヒューマンコネクテッドサービスであるべきと考えている」とも話した。

新型クラウンは“始まりの一手”

 このように新型クラウンと新型カローラ スポーツは、トヨタにとって顧客とのつながりを増強する“始まりの一手”だ。さらにその先には、人やモノの移動に限らないサービスの展開を見据える。

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 トヨタが1月に「CES 2018」(米ラスベガス)で披露したコンセプトカー「e-Palette Concept」は、自動運転技術を活用し、物流用途だけでなく、クルマ自体が移動型の店舗になる――という発想の転換で話題を呼んだ。企画段階から米Amazon.com、Uber Technologies、マツダの他、中国の配車アプリ大手Didi Chuxing、宅配ピザのPizza Hutなどが協力している。

 新型クラウンと新型カローラ スポーツは、そうした理想像を示す一歩だ。豊田社長は「(今回)クラウンとカローラ スポーツを出すことで、ベンチャー精神を持った仲間を集る場所を作りたい。仲間が出し合った新しいアイデアで、クラウンやカローラといったトヨタのクルマは進化していく」と意気込んでいる。

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