ITmedia NEWS > 企業・業界動向 >
ニュース
» 2018年07月19日 16時02分 公開

ソフトバンク孫社長が「AIのトップ企業」買いあさるワケ

「AI(人工知能)がありとあらゆる産業を再定義する」――ソフトバンクグループの孫正義社長が「Softbank World 2018」で、繰り返し強調した。同社は各業界でAIを活用するトップカンパニーを囲い込んでいる。

[片渕陽平,ITmedia]

 「AI(人工知能)がありとあらゆる産業を再定義する」――ソフトバンクグループの孫正義社長(兼会長)は7月19日、都内で開いたイベント「Softbank World 2018」で、繰り返し強調した。

 同社は、AIで需要予測を行うライドシェア大手の中国Didi Chuxing(滴滴出行)などに出資。各業界でAIを活用するトップカンパニーを囲い込んでいる。だが、ライドシェアのように日本で制限されているサービスもあり、孫社長は「日本は過去を守り、未来を否定している」と現状を批判した。

photo ソフトバンクグループの孫正義社長(兼会長)

50年以内に、AIが人間追い抜く

 孫社長は「50年以内に、あらゆる業界でAIが人間の能力を上回る。(職種によって)追い抜かれるスピードが数年異なるのは、わずかな誤差だ」と話す。そうした中、中国や米国の企業がAIを活用したサービスの開発をリード。中国のBaiduが自動運転バスを実用化し、Bingo Boxは1年間で無人コンビニを5000店舗出店する計画を打ち出している。孫社長は「AIを制するものが未来を制する。起きるであろう未来をしっかり見据え、備えることが重要だ」と強調した。

photo

 「(現段階では)AIに十分取り組んでいる、成果が出始めていると実感している企業はほとんどいないだろう。しかし10年前、iPhoneが登場した直後は、まだスマートフォンの機能を十分に使いこなす人が少なかったのと同じだ。10年後には、AIはわれわれの生活になくてはならないもの、企業が開発に取り組むべきものになる。分かっているのなら1日も早く取り組んだ方がいい」

 ソフトバンクグループは2017年、「ソフトバンク・ビジョン・ファンド」(いわゆる10兆円ファンド)を設立。英国の半導体企業ARM Holdingsをはじめ、各分野のトップランナーに相次いで出資している。特に交通や医療、金融などでAI関連のサービスをいち早く提供している企業を、重点的に傘下に収めている。

 中国のライドシェア大手Didi Chuxingもその1社だ。同社は、天候や曜日などの条件から需要を予測するAI技術を活用している。ドライバーからのルート要求の処理件数は1日400億超という。

 車両から収集している走行軌跡データは1日当たり100TB以上。急加速、前方不注意などのデータも集め、安全運転を心掛けているドライバーには報酬を与えるといった施策も展開する。“眠っている”資産である一般ドライバーを活用し、混雑の解消、運転の安全性向上まで、幅広く手掛けている。

 ソフトバンクグループは、Didi以外にも米国Uber、東南アジアのGrab、インドのOlaといったライドシェアサービスの企業にも出資。4社の流通総額を合わせると約650億ドル(約7.1兆円、17年時点)に上る。孫社長は「3〜4年後には、17年現在のAmazon.comの取扱高に達するのではないか」と自信を見せる。

photo

 医療分野では、中国のPing An Good Doctorも成果を挙げている。オンライン医療サービスを展開している企業だ。同社によれば、中国の病院では、約3分弱の診察のために、患者は平均3時間、待たされているという。

 そこで同社は、国内有数の総合病院などから集めた1000人の内勤医療チームを抱え、ネット上で24時間365日、患者の問診、処方箋の発行などに対応。その裏で、患者から健康情報を収集、医師の診断をサポートする仕組みにAIを活用している。サービスの利用登録者数は2億人超という。

photo

 この他、ソフトバンクグループは、米国の自動車メーカーGeneral Motorsの自動運転部門Cruise Automationや、AI技術を活用して顧客ごとにカスタマイズした保険商品を提供している中国のZhongAn、インドの電子決済サービス大手Paytmなどに出資している。

日本は「未来を否定している」

 孫社長は、300年間成長する企業、組織モデルとして「群戦略」を掲げている。各業界のナンバーワンの企業を手元に集めるため、各社のブランドは統一せず、持ち株比率は20〜30%に意図的に抑える考え。

 財閥経営では、グループ内企業の全てが、それぞれの業界でトップランナーになることは難しい。ファミリーカンパニーとの連携を優先し、業界トップの企業と協業できず、グループ全体の競争力低下を招くことも珍しくない。群戦略には、そうした事態を回避する狙いがある。「この1年間(戦略発表会などで)群戦略を掲げてきたが、さらに一歩、踏み込んだ言い方をすると『AI群戦略』をとる」(孫社長)

 一方、孫社長は「ライドシェアやオンラインでの処方箋の発行を、日本が禁じている(一部を除く)ということが信じられない。既存の業界を守り、未来を否定している」とも痛烈に批判した。「わざわざ日本が、未来の進化を自分で止めていることには危機感がある。無許可の白タクと従来のタクシーの争いといった議論ではなく、(AIの活用とライドシェアを組み合わせることで)需要と供給をマッチングできる。そうした出来事は、世界中の国々で起きている」

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.