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音声入力とスクリーンは相性がいい 「Amazon Echo Spot」とスマートディスプレイの可能性

» 2018年08月23日 07時00分 公開
[山本敦ITmedia]

 Amazon.co.jp(以下、Amazon)が7月下旬にスクリーン付きのスマートスピーカー「Amazon Echo Spot」を発売した。円形の2.5インチ液晶タッチスクリーンに音声操作の応答結果が表示できるほか、音楽再生時にはジャケット写真や歌詞を表示したり動画再生も楽しめる。搭載するAIアシスタントはもちろんAlexa(アレクサ)だ。

Amazonが発売したスクリーン付きスマートスピーカー「Echo Spot」

音声操作への反応が音と画の両方で返ってくる安心感

 本体のフロント側にはカメラも内蔵されている。日本ではまだ実装されていないが、遠隔地から宅内の様子をカメラで“見守る”機能やビデオ通話もスマホのAlexaアプリと連携して使えるようになる。音声によるIP通話も国内導入待ちの機能の1つだ。

 筆者もEcho Spotを国内発表後にすぐ予約して購入。届いてからずっと使い続けているが、音声だけで操作するスマートスピーカーのEchoシリーズよりも明らかに便利で馴染みやすいスマートデバイスだと感じた。やはり音声による操作への反応が、音と視覚情報の両方で返ってくる安心感がある。音声のみのスマートスピーカーはワイヤレススピーカーからの延長線上で音楽再生機能や音質面を語られることも多かったが、スクリーン付きになってスマートスピーカーは“全く新しいデバイス”であると実感できた。

Amazonでのショッピングが視覚情報を確認しながらできるようになった
インターネットラジオでは選局したステーションの名前が画面に表示される

今後の課題は音楽・映像のコンテンツ拡充

 大変に便利で楽しいEcho Spotだが、いよいよ本腰を入れて使い込み始めると課題も見えてくる。それは特に音楽・映像系のコンテンツが不足しているということだ。

 音楽配信は今のところAmazon系のサービスにしか対応していない。「Spotify」や「AWA」、そしてライバルのサービスなので難しいかもしれないが、「Google Play Music」や「LINE MUSIC」を利用しているユーザーにも門戸を開いてほしい。

動画コンテンツの充実は個人的に熱く要望したい。Amazonプライム・ビデオが利用できるようになったらキラーコンテンツになるだろう

 映像系は今のところ「Dailymotion」と「Vimeo」の動画しか見られない。「YouTube」はGoogleのサービスなのでおそらくすぐには対応できないと思うが、動画配信は日本国内で最もユーザーが多いといわれる「Amazonプライム・ビデオ」のサービスがEcho Spotに乗り入れてくることになりそうなので楽しみだ。もちろん動画配信も「Netflix」や「Hulu」「dTV」などほかの人気のサービスも幅広く使えるようになってほしい。Echoのスクリーン付きスマートスピーカーで楽しめる動画サービスが揃ってきたら、アメリカなど海外で先行発売されている7インチの大きめなスクリーンを搭載するスマートスピーカー「Amazon Echo Show」も満を持して日本上陸となるのだろうか。

7インチのディスプレイを搭載したAmazon Echo Showは日本未発売のスクリーン付きスマートスピーカー

 あとはAlexa対応のスキルについても、例えばスマート家電の動作状態をEcho Spotのスクリーンで確認できるなど視覚情報を活用できるものが揃うことを期待しよう。

LINE、Googleのスクリーン付きスマートスピーカーはどうなる

 Amazonのライバル企業は、スクリーン付きスマートスピーカーを発売するのだろうか。

 LINEは6月末に開催した事業戦略説明会で、独自のAIアシスタントサービス「Clova」を搭載した7インチのスクリーン付きスマートスピーカー「Clova Desk」を今冬に発売すると宣言した。

LINEが今年の事業戦略説明会見で発表した7インチのスクリーンを乗せたClova搭載スマートスピーカー「Clova Desk」

 やはり最大の関心事はLINEによるビデオ通話への対応だ。本体に搭載するカメラはユーザーの顔認証ができるのでセキュアなビデオコミュニケーションツールになりそうだ。またClova Deskはバッテリー内蔵なので、家中どこにでも持ち歩いて使えるところがEcho Spotにない魅力といえる。「Clova WAVE」と同じ赤外線リモコン機能も内蔵する。

カラバリはブラックとホワイトが用意される

 Googleは、“スマートディスプレイ”と呼ぶスクリーン付きスマートスピーカーを今夏に北米から導入を開始したようだ。ただし、「Google Home」のようなグーグル純正のプロダクトは発表されておらず、パートナーであるレノボ、LG、JBLにソニーといったブランドから順次発売される見通しとなっている。

18年1月のCESではGoogleのスクリーン付きスマートスピーカー“スマートディスプレイ”のプロトタイプをレノボ、LG、JBLが展示した

 Googleのスマートディスプレイについては、筆者も今年1月にラスベガスで開催されたCESでプロトタイプを目にした程度なので、具体的な使用イメージがわきにくいのだが、少なくともYouTube動画が気軽に楽しめることは他にないアドバンテージだ。

レノボのスマートディスプレイは北米で発売されたようだ

 日本国内では先にAndroid TV搭載のテレビがGoogleアシスタントを内蔵することで、Googleのスクリーン付きスマートスピーカーに近い体験が味わえることになりそうだ。すでにソニーとシャープが年内にAndroid TV搭載テレビの一部モデルにGoogleアシスタントをビルトインする計画を発表しており、音声で検索した動画がそのままテレビで見られるだけでなく、Webによる情報検索の結果を画面に表示したり、スマート家電連携も可能になる。

 スクリーン付きスマートスピーカーやスマートテレビなど、操作への反応を目と耳で確認できるデバイスの台頭は、音声入力というユーザーインタフェースが本格的にブレイクする引き金になるかもしれない。

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