ITmedia NEWS >

ボーズが作った“眠り”をサポートするイヤフォン「sleepbuds」を体験した(1/4 ページ)

» 2018年07月11日 13時21分 公開
[山本敦ITmedia]

 Bose(ボーズ)が今までにない、まったく新しいスマートイヤフォンを発表するという知らせを受け、米国ニューヨークまで体当たりをしに出かけてきた。ボーズといえば世界的に名の知れたオーディオブランドだが、今回発表したイヤフォンは音楽を聴くためのデバイスではない。名前は「Bose noise-masking sleepbuds」。北米・カナダで6月21日に249.99ドル(約2万7000円)で販売がスタートし、日本には今年秋の上陸を予定している。このイヤフォンの正体を、開発に携わったボーズのキーパーソンへのインタビューを交えながら解き明かしていこう。

ボーズが発表した音楽用じゃないイヤフォン「Bose noise-masking sleepbuds」

 Bose noise-masking sleepbuds(以下:Bose sleepbuds)は、見た目は完全ワイヤレスイヤフォンの姿をしているが、サイズ感は明らかに筆者がこれまでに見てきたどのモデルよりも小さくて軽い。ボーズはこれを「イヤーチップを外した本体のサイズが1セントの硬貨よりも小さい」と表現していたが、日本人には1円玉より小さいとか、エム・アンド・エムズの1粒のチョコ並みと言い換えればイメージしやすいだろうか。

通常の音楽リスニング用のイヤフォンに比べるとサイズはかなり小さめ

 本機の正体を先に書いてしまうと「スマートな耳栓」のような製品だ。一般的なワイヤレスイヤフォンのようにスマホとペアリングして好きな音楽をストリーミングして聴くことはできない。その代わり、本体のメモリーにはボーズが開発した睡眠をサポートする特殊な音源「sleeptrack」が複数タイトル収録されている。例えば「いびき」や「人の話し声」「ロードノイズ」など主に夜間の静かな時間に気になるノイズを、sleeptrackを再生することで「マスキング」してくれるのだ。

シャツのボタンサイズの基板に通信用のモジュールとフラッシュメモリーを搭載した

 ボーズといえば「QuietComfort 35」や「QuietControl 30」に代表されるアクティブノイズキャンセリング機能を搭載するヘッドフォンやイヤフォンが有名だ。ここでアクティブノイズキャンセリングの仕組みをざっくりと説明しておくと、オーディオ機器に内蔵するマイクで拾った環境音からノイズを解析・抽出し、そのノイズと位相を反転させた信号を出力して、自動車の走行音や飛行機のエンジン音など音楽再生にとって邪魔になる音だけを“打ち消す”。

 そして今回ボーズが開発した「ノイズマスキングテクノロジー」は、このアクティブノイズキャンセリング技術と「似て非なるもの」だという。マイクによる集音や複雑なノイズ解析は行わない。特殊な音源であるsleeptrackにいびきや生活騒音を溶け込ませ、人間の耳で知覚しにくくする仕組みだという。動物や昆虫の「擬態」のように、耳がノイズを知覚できなくするようなイメージだろう。

Bose noise-masking sleepbudsのシステムエンジニアリングを担当したダニエル・リー氏

 新製品のシステムエンジニアを担当した米ボーズのダニエル・リー氏は「Bose sleepbudsにプリインストールする10種類のsleeptrackは音響心理学や神経学などの知見をベースにしています」と説明する。音源は自然の音を録音して、そこに独自のデジタル加工を施した。

 「ノイズマスキングテクノロジーは科学的な理論から生まれたボーズの最先端の音響技術です。騒がしい環境の中で音楽を集中して楽しむためのアクティブノイズキャンセリング機能ともまた違って、静かな環境に身を置き、体と心をリラックスさせて眠りに就きたい時には、Bose sleepbudsが普通の耳栓でもブロックできないような音を、より自然に覆い隠せるのです」(リー氏)

       1|2|3|4 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.