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ボーズが作った“眠り”をサポートするイヤフォン「sleepbuds」を体験した(3/4 ページ)

» 2018年07月11日 13時21分 公開
[山本敦ITmedia]

クラウドファンディングを商品開発に活用

 Bose sleepbudsが商品として開発された背景については、ボーズの新規事業領域であるウェルネス(=ヘルスケア)部門のカテゴリーディレクターであるブライアン・マルカヒー氏にうかがった。

 「Bose sleepbudsの構想はいまから約5年前に立ち上げたものです。その後、研究開発を続けてきたノイズマスキングテクノロジーの技術とマーケティングの成果にも良い見通しが得られたため、約2年前に商品化のプロジェクトチームを結成しました」(マルカヒー氏)

Bose sleepbudsの商品開発を統括するウェルネス部門 カテゴリーディレクターのブライアン・マルカヒー氏

 ボーズは17年秋に本機のプロトタイプを準備して、11月にはクラウドファンディングサービスの「Indiegogo」でキャンペーンを展開し、北米を中心に多くの支援者を集めてテストマーケティングを開始したのだ。ボーズがクラウドファンディングサービスを商品開発に活用したことはこれが初めてだった。「今年の春から最初の支援者の皆様にプロトタイプを届けて、得たフィードバックを元にブラッシュアップを続けてきました。ボーズにとっても全く新しいカテゴリーの商品となるBose sleepbudsが完成度の高い製品に仕上げられたと自負しています」とマルカヒー氏は自信に満ちた口調で語ってくれた。

 ボーズが本機の記者発表会をニューヨークで開催したことにも意味がある。アメリカではニューヨークのような大都市圏を中心に、夜間の「騒音」による隣人トラブルが頻発しているという。殊にアメリカではニューヨークなど一部地域で、緊急電話の番号「911」のほかに、騒音などのトラブル発生時にかける専用の電話番号「311」を提供しているが、このコールが最も頻繁に鳴るのが夜の9時から午前1時前後のいわゆる入眠時間帯。ニューヨークでは2017年に年間250万件の通報が寄せられ、年々その数が増え続けているという。

充電器を兼ねた専用アルミケースに左右のイヤフォンを収納する

 「特にアメリカではスリープロス(寝不足/不眠症)が心臓病や高血圧、癌にアルツハイマーといった命にかかわる病気を引き起こす深刻な要因の一つになっていると指摘されています。体と心の健康の源でもある睡眠のクオリティを最先端のテクノロジーによって改善するウェルネス(健康維持・増進)デバイスの市場は今後大きな成長領域になると当社は考えています。またボーズだからこそ得意とする音響技術、音響心理学と神経科学、さらにオーディオの技術を活かして画期的なウェルネス製品を発明できるはず。その第1弾となる製品がBose sleepbudsであり、ボーズにとっても非常に大事な製品なのです」(マルカヒー氏)

オーディオの技術をウェルネス事業に

 ボーズは今、事業の柱であるオーディオを核として、周辺にさまざまな新しい事業領域を開拓するための種まきも積極的に行っている。イベントに出席したボーズのCEOであるボブ・マレスカ氏に今後の方針を訊ねた。

ボーズのCEO、ボブ・マレスカ氏

 「私はボーズに在籍して32年になりますが、このBose sleepbudsはブランドの最高傑作と呼べる製品の一つになると確信しています。ボーズがこれまでにオーディオで培ってきたノウハウを、今後ウェルネスの部門に展開して、多くの人々の健康的な生活をサポートできることに喜びを感じています。Bose sleepbudsのように、今までにない新しい製品を形にできた背景には、私たちがヘッドフォンやイヤフォンという、ウェアラブルデバイスの原型的な製品の開発に深く幅広い見識を持っていたからです。本機の開発から得たノウハウを今後の製品開発にも色々と活かせると期待しています」(マレスカ氏)

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