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電子チケットで入場、買い物も パナソニックとぴあ、スタジアム事業で協力

» 2018年09月14日 17時57分 公開
[片渕陽平ITmedia]

 パナソニックとぴあは、スポーツイベントなどの入場チケットの電子化を進める。電子化したチケットで、入場時の認証に加え、グッズや飲食物の購入もできるようにする。来場履歴と購買履歴を連携しやすくすることで、新サービスの創出にも役立てる。2020年をめどに事業化する計画だ。

photo 実証実験では、紙のチケットで来場した人にICチップが入ったリストバンドを提供する。入り口のゲートで専用端末にリストバンドをかざすと、認証が完了する

 まず、11月24日にパナソニックスタジアム吹田(大阪府吹田市)で行われるJ1リーグのガンバ大阪とV・ファーレン長崎の試合で実証実験を行う。

 これまでガンバ大阪の試合では、来場者の約57%が紙チケットで入場していたが、実証実験では来場時に紙チケットとICチップが入ったリストバンドを交換。既にnanacoカードやスマートフォンで使える電子チケットなどを利用している来場者と合わせ、約3万人(ホーム側全て)のチケットを電子化できる見通しだ。

photo 約3万人(ホーム側全て)のチケットを電子化する

 来場者は、入り口のゲートに設置された専用端末(タフパッド)に、リストバンドかnanacoカード、スマートフォンなどをかざすと認証が完了し、スムーズに入場できる。また、会場内にある別端末にリストバンドをかざすと、近くのディスプレイに座席へのルートが表示される仕組みも構想している。

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 リストバンドを使ったキャッシュレス決済もテストする。スタジアム内で買い物をする際、専用端末にリストバンドをかざすだけで支払いを行える。来場者は入場後、手持ちのスマホで専用のWebサイトにアクセスし、リストバンドにクレジットカード情報などをひも付ける必要がある。

photo nanacoカードなどに加え、リストバンドでもキャッシュレス決済をテストする

 これまでもスタジアム内のグッズ店舗、飲食店はICカードなどを使ったキャッシュレス決済に対応してはいたが、利用率は10〜20%程度(取り扱い件数ベース)にとどまっていた。リストバンドによる決済も加え、レジの混雑緩和などにつながるか検証する。

 ぴあの東出隆幸上席執行役員は「一足飛びにチケットを全て電子化することはハードルが高い。今回の実証実験のように、強引ではあるが紙チケットと交換するなどして、(電子チケットの利便性を伝えるため)長期的に啓蒙を行うことが重要」と説明する。

 来場者は、nanacoカードやリストバンドなど1つで入場時の認証からルートの表示、買い物の支払いまで行えるメリットがあり、スタジアム運営者やスポンサー企業も、利用者の来場履歴と決済履歴をひも付けることで、新サービスを生み出せる可能性がある。

 例えば、利用者には来場回数に応じて飲食店のクーポンを発行することを想定。スタジアムの運営側は「初めて来場する人の割合が多い」といった情報を基に、そうした人が購入しそうなグッズを店頭に多く並べる――といった活用を見込む。

「ゴールデンスポーツイヤーが到来する」

 パナソニックの井戸正弘執行役員は「ゴールデンスポーツイヤーが到来する」と話す。日本国内では2019年にラグビーワールドカップ、20年に東京オリンピック・パラリンピック競技大会、21年にはワールドマスターズゲームズが開催される。スポーツ事業の市場規模は5.5兆円(15年時点)から15兆円(25年)に拡大するとの推計もある。

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 これまでパナソニックは、スタジアムの照明や映像・音響機器など、物販型事業が中心だったが、ぴあとの取り組みを通じ、コンテンツ事業やスタジアムの運営事業などへ事業領域を拡大する考えだ。ぴあも、従来のチケットサービスだけでなく、スタジアム全体のサービスへの事業を広げる。

 井戸氏は「2020年の東京オリンピックの競技場へ導入するチャンスもあるとは思うが、一過性のイベントのためだけに進めているものではない」と話す。マネタイズの仕組みなどを詰めながら、サッカー以外のスポーツへの展開も検討する。

photo 左からパナソニックの井戸正弘執行役員、ぴあの東出隆幸上席執行役員

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