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「銀行のデジタル化は避けられない」 RPAで20万時間の業務削減へ 横浜銀行の挑戦特集・RPAで仕事が変わる(2/2 ページ)

» 2019年02月15日 12時45分 公開
[片渕陽平ITmedia]
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 だが、こうした業務は「付加価値は生まない」。そこでRPAを導入し、デスクトップPCから社内イントラを通じて自社の顧客管理システム、取引履歴検索システムなどにアクセスし、照会内容を入力した回答書を印刷する――という一連の作業を自動化した。最初に行員が口座番号などキーとなる情報を入力する必要こそあるが、時間がかかる印刷処理を夜間に行うなどの工夫もあり、4000時間の作業量を削減できたという。自動化によって返送までのスピードも向上した。

 この作業も含め、初年度(17年10月〜18年3月)は5業務で5000時間を削減。18年度(18年4月〜19年3月)は累計80業務まで対象を広げ、6万2000時間の削減を目指している。19年1月現在、既に51業務で導入を完了しているといい、古屋さんは「現時点では達成できる見通し」と説明する。

 スタートダッシュがうまくいったことで、行内でのRPAの認知度も高まってきた。当初は総合企画部がRPAに適した業務を選定していたが、現在は各部署から募集しており、対応が間に合わず“漏れてしまう”ケースもあるという。「新しい試みなので、最初は『何ができるか、よく分からない』というイメージがあったと思う。導入事例をイントラで掲示し、『こんなことができるのか』というイメージが行内でも広がってきた」

今後の課題は

 だが、まだ目標達成は遠い。古屋さんらは、2019年度(19年4月〜20年3月)には累計300業務で20万時間以上の削減を目指している。OCR(光学文字認識)技術を活用し、手書きの書類を読み取れるようにすることで、RPAの対象業務を拡大させる他、RPAとAI(人工知能)を組み合わせることも検討する。

 例えば、取引先企業の適時開示情報のうち、訴訟などネガティブな情報を逐一チェックする判断業務も、対象業務になるとみている。日本取引所グループ(JPX)のWebサイトから適時開示情報を取得してくる部分をRPA化し、その後の判断業務をAIに任せる――という考えだ。

 一方、各部署のRPA導入を統制するルール作りも必要だと、古屋さんは強調する。「ロボットをポコポコと作ればいいというものではない。作った人しか分からない、とならないように、業務継続性の観点からもマニュアル化しておくなど、ルール整備を進めている」(古屋さん)

 また「さまざまなシステムを横断的に使うため、RPAを導入する際、どのシステムの情報を照会しているかを管理しておかなければならない」と古屋さん。システムがバージョンアップするとRPAが動かなくなり、業務に支障が出るというケースも考えられる。古屋さんは「事前に更新内容が分かっていることが望ましいが、起こってみないと分からない場合もある。管理方法の構築は目立たない部分だが、早く検知して対応するためには、しっかり取り組む必要がある」と話す。

photo 左から横浜銀行 総合企画部 デジタル推進プロジェクトチームの古屋信幸さん(プロジェクトマネジャー)、商圭佑さん

 古屋さんは「低付加価値業務から高付加価値業務へのシフト」を掲げる。「低付加価値とはいっても大切な業務だが、リソースは限られている。人がしなくてもよい業務はRPAで代替し、その余力を、お客さまのための質の高いサービス作りへと振り分けていきたい」(古屋さん)

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