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「ヤベェ本」2万RTで異例の重版、「有職装束大全」が絵師のハートをつかんだ理由(6/6 ページ)

» 2019年10月21日 07時00分 公開
[長浜和也ITmedia]
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──平安時代は約400年にわたります。有職装束大全をきっかけに平安時代の文化に関心を持った人は、まずはどこに着目するといいでしょうか。

八條さん やはり、紫式部が活躍した時代(西暦1000年前後)ですね。それ以前はあまり記録が残っていないので。まずは、見た目がきれいな女性の装束から入っていくのがいいでしょう。女性の装束はある程度自由だったのに対して、男性の装束は法令できっちり定められていました。分かりやすいのですが、自由度が少なくて面白くない面もあります。例えば、束帯は位によって色が変わりますが、形は同じです。太刀を帯びるときに着用する平緒は現代でいうネクタイみたいなもので、個人が自由なデザインを身に着けることができました。

女性の装束は「十二単」が広く知られているが、正式には「五衣唐衣裳」(いつつぎぬからぎぬも)と呼ぶ

──有職装束大全はボリュームのある本ですが、どこから読めばいいですか。

八條さん やはり第一章にある「装束の歴史」を最初に読んでいただきたいです。その後は、興味のある項目から読んでいたければと。装束は歴史が進むにつれて簡略化していくのですが、その流れを把握してもらいたいですね。

まずは第一章の「装束の歴史」を読んでから、自分の興味のある項目を読むといい
各項目も歴史と各部位の名称を把握しておくと、その後の理解が容易になる

──装束の入門として良い機会ともいえる「即位の礼」が22日に始まります。有職装束大全も「即位の礼」の解説に1章分丸々使っていますね。

八條さん 即位の礼は、奈良時代から江戸時代末期の孝明天皇まで途絶えることなく同じ形式で執り行われていました。明治即位の礼で、まず大きく変わり、大正即位の礼から、(皇室令の1つ「登極令」にて)定められた形式で執り行われています。即位の礼では、そのときにしか見ることができない貴重な装束を身につけます。男性皇族の束帯も、女性皇族の五衣唐衣裳も、即位の礼とご成婚でしか着用しないので、本書でも1章を使って解説しています。即位の礼はテレビでも中継があると思いますが、そのとき、有職装束大全が手元にあるとより興味深く見ることができるはずです。

 即位の礼では、天皇は黄櫨染(こうろぜん)の御袍を、皇太子は黄丹(おうに)の袍を着用することがしきたりとして決まっていますが、皇后と皇太子妃はお好みの色と柄の五衣唐衣裳(十二単)を新調されます。このとき、唐衣(注4)や表衣(注5)にあしらう文様や襲色目(かさねいろめ:内側に着用する5枚の五衣と単衣の6色で構成する襟元や裾におけるカラーコーディネート)がどのようになるのかは注目したいポイントです。

注4:とうい:五衣唐衣裳で一番外側に着るジャケットのようなもの

注5:うわぎ:唐衣の下に着る

有職装束大全では、即位の礼に関連した装束の法令や決まり事も解説している

──今回の盛り上がりをきっかけに、過去作の復刻や新しい企画の話も持ち上がったみたいですね。

八條さん マール社から発売された「平安文様素材CD-ROM」(2009年)は絶版状態でしたが、今回の件でダウンロード形式と紙の書籍での復刻がそれぞれ決まりました。また、有職の色彩や、有職文様に関する書籍を新しく執筆する予定です。

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