ITmedia NEWS > 社会とIT >

日本でのMaaS普及、“ラストワンマイル”はデータ連携? Uberや国交省などが議論(3/4 ページ)

» 2021年11月15日 09時00分 公開
[石井徹ITmedia]
WILLERの村瀬茂高社長(瀬は右肩が刀となる異体字)

 WILLERがMaaSの主戦場とみているのは「地域におけるMaaS」。自宅から最寄り駅までといった、近距離の交通手段だ。同社はその第1弾として、AIオンデマンドバスの「mobi」を東京都心と京都丹後鉄道の駅周辺で運行している。

 手軽に利用できるオンデマンドバスのような交通手段の導入により「駅まで行くのが面倒という問題を解決すれば、公共施設や商業施設が賑わい、移動が増え、全ての交通モードの利用が促進される」(村瀬社長)とした。

WILLERが描くMaaSのコンセプト「mobi」 既存の鉄道路線をオンデマンドバスで拡張させる構想だ

 AIオンデマンドバスは、乗り合いタクシーを発展させたような交通システムで、運行地域内に多数設置されたバス停の中から、乗客の要望にあわせて運行ルートを決定するというものだ。WILLERでは特に京都丹後鉄道から乗り継ぐ“ラストワンマイル”の交通手段としてAIバス導入を有望視しており、今後各駅での導入を進めていくという。

WILLERは名古屋市で自動運転を活用したモビリティサービスの実証も行っている

 WILLERは自動運転を活用したモビリティサービスにも取り組んでおり、シンガポールでは観光客を対象とした有償の自動運転サービスも手掛けている。2021年8月から10月までは名古屋市でも自動運転による試験走行を実験しており、将来的にはオンデマンドバスと組み合わせて、地域密着型の交通手段として発展させる考えだ。

既存事業者との融和を図るUber

 Uber Japanは多くの国でライドシェアリングサービスを提供しているが、日本では既存のタクシー・ハイヤー事業者と連携して配車サービスの形態で運営している。

 日本ではタクシー配車のダイナミック・プライシングの導入を働きかけている。これはタクシーの運賃を需要に応じて変動させるもので、オフピーク時には値下げして利用率を向上させ、ピーク時には割増運賃での運行を想定する。乗車率が向上することで、結果としてタクシー運転士の待遇改善も期待できると同社は主張する。

 オンラインでコメントを寄せた米Uber Technologiesのプラディープ・パラメスワランさんは「移動の価値は人によってさまざまだ。多少運賃が高くても早く移動したい人がいれば、安く移動したいと考える人もいる。多少時間をかけても乗り換えを避けて動きたいという人もいる。Uberのモビリティサービスが目指すのは出発地から目的地まで一気通貫な移動手段の提供だ」として、既存の公共交通機関と連携していく方針を示した。

米Uber Technologiesのプラディープ・パラメスワランさん(インド太平洋地域統括)

日本版MaaSの課題はデータ連携

 国交省がMaaSにわざわざ「日本版」と添えているのは、日本の交通機関に特有の事情があるためだ。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.