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J-POP曲をファミコン音楽風に自動編曲 遺伝的アルゴリズムを利用、日大が開発Innovative Tech

» 2021年11月29日 08時00分 公開
[山下裕毅ITmedia]

Innovative Tech:

このコーナーでは、テクノロジーの最新研究を紹介するWebメディア「Seamless」を主宰する山下裕毅氏が執筆。新規性の高い科学論文を山下氏がピックアップし、解説する。

 日本大学北原研究室の研究チームが開発した「遺伝的アルゴリズムを用いたファミコン風自動編曲システムの生成」は、既存のJ-POP曲をファミコン風音楽へアレンジするシステムだ。音楽知識がない人でも気軽にファミコン風音楽への自動編曲が行える。

システムの概要図

 検索すれば、ファミコン風にアレンジした曲が多数ヒットする。これは音楽の知識があり機材などが整っている人が独自に編曲したものが多い。しかし、ファミコン音楽特有の制約を破っているものがほとんどだ。

 ファミコン音楽特有の制約とはなにか。ファミコンに搭載される音源チップの機能が制限されているため、ファミコン音楽では一度に同時に鳴らせる最大同時発音数が限られる。その最大同時発音数は4音で、方形波2音、三角波1音、ノイズ1音と音の種類も決まっている。ファミコン音楽には、最大同時発音数4音の制約が存在するわけだ。

 そこで今回は、ファミコン音楽の制約を守り、音楽未経験者でも気軽にファミコン風音楽へ自動編曲できるシステムを提案する。

 ファミコン音楽は最大同時発音数が4音までの制約があるため、編曲するには音を削除しなければならない。一方で原曲らしさを損なうことはしてはならない。単純に同じ変換ルールで音を減らせば良いわけではなく、それぞれの曲の特徴に合わせた最適な変換ルールを決めて音を削除しなければならない。

 この最適な変換ルールを決めるために研究チームは、遺伝的アルゴリズムを採用した。遺伝的アルゴリズムとは、あるデータを目標に近づけるために使われる手法の一つ。元となるデータを持った個体を複数用意し、目標に近いものを生き残らせていく。生き残った個体は自身のデータの特徴を遺伝子に子孫のデータを生み出し、世代交代する。

 この遺伝的アルゴリズムを使うことで、各パートに適用すべき変換ルールと各パートの優先順位が決まる。変換ルールで音を削減した後は、優先順位が高いものから音を残すことができる。

 システムは、既存の曲のMIDIファイルを入力して、遺伝的アルゴリズムで変換ルールを決定し音の削減を行い、MIDIファイルとして出力する。出力した各音に対し手動で音を割り当てファミコン音楽に仕上げる。

 実験では、J-POP曲から15曲をファミコン音楽に編曲し、プロの作曲家の主観的評価とデータを基にした客観的評価を行った。主観的評価では、遺伝的アルゴリズムを行わず、小節ごとに異なった変換ルールを適用したバージョンの評価が高く、客観的評価では、遺伝的アルゴリズムを行い、小節ごとに異なった変換ルールを適応したバージョンが高評価だった。

出典および画像クレジット: 田原 花蓮, 植村 あい子, 北原 鉄朗, 「遺伝的アルゴリズムを用いたファミコン風自動編曲システムの生成」『研究報告音楽情報科学(MUS)』 2021-MUS-130巻, 9号, 1-8ページ, 2021-03-09



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