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BroadcomがVMwareを買収した理由 実は双方にメリットあり(3/4 ページ)

» 2022年05月30日 08時23分 公開
[大原雄介ITmedia]

CA Technologiesの買収で半導体オンリーから脱皮

 Qualcomm買収が破談となった半年後の2018年11月、BroadcomはCA Technologiesを690億ドルで買収した。同社は分散コンピューティングとかAPI Gatewayなど、エンタープライズ向けの広範なソフトウェアインフラを提供する企業である。

 CA Technologiesもまた企業買収を繰り返した会社で、1976年の創業から2018年のBroadcomによる買収の間に71社ものソフトウェア企業を買収、これらの会社が提供していたソフトウェアをCAのブランドで統合して提供するという形でビジネスを拡大しており、ある意味Broadcomとは相性が良かった(?)のかもしれない。

 このCAの買収で、Broadcomは半導体のサプライヤーから、半導体とソフトウェアの組み合わせによるソリューション提供企業に脱皮することになる。

 同社のForm 10-K(年次の有価証券報告書)によれば買収直後(2018年度:2018年11月4日)と1年後(2019年度:2019年11月3日)における売上とその内訳は、

2019年度 2018年度
半導体 173億6800万ドル 189億3400万ドル
ソフトウェア 51億5600万ドル 17億8000万ドル
IPライセンス 7300万ドル 1億3400万ドル
売上合計 225億9700万ドル 208億4800万ドル

となっている。

 2018年度にはCAの分は加味されておらず、販売した半導体向けのソフトウェアだけであり、2019年にCAの分がそのまま加算されている格好だ。

 Broadcomは2019年度にはやや半導体の売上が落ちているが、これを埋めて余りある。ちなみにCA Technologiesの2018年度(2018年3月末)の売上は42億3500万ドルほどであった。この2019年度の時点で、ソフトウェアの売上比率は全体の23%ほど。

 ここからBroadcomは、引き続きソフトウェア企業の買収に向かう。2019年にはSymantecを買収(ただしサイバーセキュリティ部門は、2020年にアクセンチュアに売却)してこのソフトウェアビジネス強化に務めるが、CA買収のときほどの大きな売り上げ増加にはつながっていない。

 2020/2021年度(2020年11月1日/2021年10月31日)における売上と比率は、

2021年度 2020年度
半導体 203億8300万ドル 172億6700万ドル
ソフトウェア 70億6700万ドル 66億2100万ドル
売上合計 225億9700万ドル 238億8800万ドル (IPライセンスはもう内訳から落ちている)

といった感じで、ソフトウェアの売上は順調に増えてはいるものの、大きな伸びにはなっていない。

 そもそもなんでBroadcomがCAを買収したかと言えば、半導体メーカーの買収はQualcommの失敗で分かるようにもう難しくなっており、この分野で更に売上を急激に伸ばすのは困難であることが明らかなので、企業成長のためのエンジンを半導体から他に移す必要が出て来たことに起因する。

 もちろんベンチャー企業とかなら独占禁止法に引っかかる事もないから買収は難しくないだろうが、売上を伸ばすという目的からすると効率が悪い。効率が良いのはそれなりの売上を持つ企業の買収だが、Qualcomm買収破談で経験したようにいろいろ縛りがある。であれば半導体部門はCash Cow(儲けの出る商品)として維持していくとして、別に売上を伸ばす部門を新たに見出した方が早い。

 だからといって門外漢な分野(例えば食品製造とか)に進出しても金を無駄にするだけである。そしてBroadcomの半導体部門はコンシューマー向けというよりはビジネス向けであり、バックボーン向けのネットワークやストレージなど、エンタープライズ/インフラ向けが強い。であれば、そうしたエンタープライズ/インフラ向けのソフトウェア企業を狙うのは至極当然のことであり、うまくすれば相乗効果も期待できる。

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