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BroadcomがVMwareを買収した理由 実は双方にメリットあり(2/4 ページ)

» 2022年05月30日 08時23分 公開
[大原雄介ITmedia]

Broadcom、創業早々に次々と買収開始、買収されても買収を続ける

 ただデジタル信号処理の基礎そのものはBroadcomが独自に立ち上げたとしても、それを製品に応用するためにはさまざまな業界向けのユースケースなどに対応する必要がある。そうしたことを学ぶよりも、そうした用途向けの製品を作っている会社を買収し、そこにBroadcomの技術を入れていく方が立ち上げは早くなる。

 そんなわけで同社は1999年からまずネットワークやストレージ、VoIP/DSP、ワイヤレスなどに関連した企業を次々買収、ラインアップを拡充していく。

 ヘンリー・ニコラス3世の方は2003年にBroadcomを去るが、この時までに23もの会社を買収(2000年は、それこそ毎月1つ会社を買収していた)、ヘンリー・サミュエリ博士は2008年に取締役会会長の座を退くが、この時点では38もの会社が買収されている。

 最終的にAvago Technologiesによって買収されるまでの間に、合計54もの会社(最後に買収したのは、ネットワーク業界でも老舗の1つであるEmulexだった)を買収している。有名どころではNetLogic MicrosystemsとかSiByteなどがある。SiByteはこちらの記事で触れた、P.A.Semiのダニエル・W・ドバープール氏がDECを退職後に最初に作ったMIPS64ベースのCPUを提供する会社である。

 買収した会社のほとんどはハードウェアを提供する企業だったが、Digital Furnace(データ圧縮)とかRAIDCore(RAIDソフトウェア)など、ソフトウェア企業もいくつか存在する。ただ同社の基本方針はチップを売ることで、ソフトウェア企業を買収するのはそのチップを売るのに役立つソフトウェアを保有している、というのが基本姿勢だった。

 一方のAvago Technologies、こちらはもとをただすとHPである。HPは1999年にコンピュータとプリンタ以外の全ての事業をAgilent Technologiesとして分社化する。この当時のAgilent TechnologiesはTest and measurement、Semiconductor products、Healthcare solutions、Chemical analysisという4つの事業部から構成されたが、2003年にSemiconductor products部門がファンドに売却される形で分社化され、Avago Technologiesとなる。2009年にはIPOを果たすが、この前後に会社のポートフォリオを多少入れ替えている。

 例えば2006年にはストレージ関連製品をPMC-Sierraに、プリンタ向けASICをMarvellに、イメージセンサー関連ビジネスをMicronに売却しているし、2007年には赤外線関連製品を台湾Lite-Onに売却している。その一方で2007年にはPOF(ポリマー光ファイバー)関連ビジネスを独Infineonから買収、2009年にはロータリエンコーダーなどを製造している日本のネミコンを買収するといった具合だ。

 ただ2010年頃から業績が少し好転したこともあって、ここから拡大路線に舵を切る。2013年にLSI Corporation、2014年にEmulexを買収、2015年には旧Broadcomを買収し、この後Brocade Communications Systemsを買収。そして2018年にQualcommの買収を試みて失敗する訳だが、この直後から同社は買収する会社の方向性が変わってきている。

photo Broadcomの社史では50年以上の歴史を持つ技術資産があるとしている

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