高くなる電気料金を削減へ、メニュー見直しとピーク制御が効果的エネルギー管理

東京電力が電気料金を値上げしたことで、企業や自治体、マンションの管理組合でも対応策に追われている。ところが電気料金の仕組みは意外に知られていない。正確に理解して最適なコスト削減策を講じる必要がある。

» 2012年04月11日 20時01分 公開
[石田雅也,ITmedia]

 4月1日から始まった東京電力による電気料金の値上げが各方面に大きな波紋を広げている。企業や自治体の一部が値上げ拒否の姿勢を強める一方、一般家庭においてもマンションのエレベータなど共用部分で使われる電気料金が値上げされることによって管理費の増額を避けられない事態になっている。

 企業の中でも特に電力の使用量が多い製造業や流通業においては、電気料金の値上げによるコスト増加は死活問題になりかねない。とにかく早急に対策を講じる必要があるが、電力の使用量を減らして事業に影響を及ぼしてしまっては本末転倒になる。電気料金の仕組みや電力会社のメニューを詳しく調べたうえで、適切な節電対策を実行すべきである。

百貨店や大規模ビルは年間5000万円のコスト増に

 電力会社の電気料金は複雑な体系になっている。まず供給される電力量や電圧によって4段階に分かれる(図1)。このうち企業が契約対象になるのは、上から3段階までの「高圧」と呼ばれる区分である。電力量や電圧が最も低い「低圧」の契約は、一般家庭のほかに小規模の店舗や工場が結んでいるケースも多い。

ALT 図1 電力会社との契約は電力量や電圧によって4段階に分けられている。さらに企業向けの契約は工場を対象にした「産業用」と、それ以外の「業務用」で料金メニューが異なる

 東京電力が4月1日から値上げを実施したのは、企業向けの「高圧」契約に対してで、値上げ率は平均17%とされている。値上げのモデルケースとして東京電力が公表した2つの例で実際の金額を見てみよう。

 百貨店や大規模オフィスビルなどが契約する電力量の最も大きい「特別高圧」の場合、標準的なモデル(契約電力4000kW、月間使用量160万kW時)で18.1%、年間で5000万円近い増加が見込まれている。中小のスーパーや事務所単位で契約する「高圧小口」の場合には、標準モデル(契約電力150kW、月間使用量3万3000kW時)で13.4%の値上げになり、年間で約100万円の増額になるという。

 企業向けの電気料金は、月額固定の「基本料金」と、月間の使用量による「電力量料金」の2本立てになっている(図2)。今回、東京電力が値上げしたのは電力量料金の単価である。

ALT 図2 企業向けの電気料金の計算方法。主に「基本料金」と「電力量料金」で決まる。出典:東京電力

 この値上げ分を抑制するためには、電力の使用量を減らすほかに、単価の安い別の料金メニューに変更する方法もある。東京電力に限らず各電力会社は、曜日や時間帯などによって単価を変えた複数のメニューを用意している。個々の企業が電力の利用傾向に応じた最適なメニューを選べば、従来よりも電気料金を引き下げることは可能だ。

小規模ビルは30分単位の「ピーク値」で基本料金が変わる

 企業向けの電気料金のうち、小規模ビルなどが契約している「高圧小口」の場合には、基本料金の設定方法にも注意を払う必要がある。高圧小口の契約に限って、基本料金が特殊な基準で決められている。

 電力会社は利用企業に設置した電力計によって毎日の使用量を測定しているが、そのデータを30分単位で集計して、最も多かった時の電力量を「ピーク値」として認識する。高圧小口の基本料金は、直近の12カ月におけるピーク値を契約電力として計算する仕組みになっている。

 たった30分間だけ極端に多くの電力を使うと、その電力量が以降の12カ月間にわたって基本料金に反映されてしまう。その後にピーク値を超える電力を使った場合には、新しいピーク値が適用されて、さらに基本料金がはね上がる。この点を知らないために、過大な契約電力のまま高い電気料金を払い続けている企業は少なくないだろう。

 こうした問題は、電力の使用量をきめ細かく把握するBEMS(ビル向けエネルギー管理システム)を使って解消することができる。BEMSの機能の一つとして「デマンド制御」があり、あらかじめ設定したピーク値を超えないように空調や照明を制御することが可能になる。

 電力使用量の削減とともに、ピーク値の抑制によっても、電気料金を削減できる余地は小さくないはずだ。今こそ企業にとっては、地道な節電の努力に加えて、電力会社と契約しているメニューの見直しと、BEMSによるスマートな電力活用法に取り組むべきである。

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