供給不足による停電も十分考えられる、今冬の北海道の電力事情電力供給サービス(1/2 ページ)

一般電気事業者9社(沖縄電力を除く)が提出した、今冬の電力需要予測と最大供給力見通しについて政府は「需給検証委員会」を開き、各社の見通しを検証した。各社の予備率は最低限必要な3%を超えているが、北海道電力による供給が不足する可能性が高いことがはっきりした。

» 2012年10月25日 11時00分 公開
[笹田仁,スマートジャパン]

 経済産業省は10月中旬に、沖縄電力を除く一般電気事業者9社に今冬の電力需要予測と最大供給力見通しをまとめた書類を提出するよう依頼した。その見通しを検証した「需給検証委員会」では、北海道電力の電力供給体制に不安が残るという声が相次いだ。

 最大需要電力に達したときの供給余力を示す予備率を見ると、北海道電力は2012年12月が7.8%、2013年1月が6.7%、2月が5.8%、3月が8.2%となっている(図1)。自然な需要変動に対応するには、3%以上の予備率がなければならない。発電所のトラブルや急な気候の変化に対応するには、追加で4〜5%必要だ。つまり、3%が最低限のラインで、7〜8%あればひとまずは安心できるというわけだ。

図1 一般電気事業者9社が提出した今冬の電力需要予測と最大供給力見込み

 北海道電力の予備率を見直すと、1月と2月は7%を下回るが、最低限のラインである3%は上回っている。2012年12月〜2013年2月まで予備率3%台が続く九州電力に比べれば余裕があるように見える。

不安を感じさせる要因は2つ

 北海道電力が供給不足に陥る可能性が高いとする理由は主に2つ。1つ目は他社からの融通を受けるために津軽海峡の海底に通している「北海道・本州間連系設備」の送電能力が低いこと。もう1つは北海道電力が利用している発電所では、比較的規模が大きい発電設備を使用していることだ。

 北海道・本州間連系設備は2極の送電線を持っており、送電能力は1極当たり30万kW。合計で60万kWだ。連系設備に不具合が発生して1極もしくは2極とも使用不能になると、発電所に何らかのトラブルが発生したとしても、融通を十分に受けられない。すると供給不足となり、大規模停電を引き起こしてしまう可能性が高い。

連系設備が停止することは十分にあり得る

 過去の記録を調べると、北海道・本州間連系設備は毎年何回か予定外のトラブルで停止している。2011年は特に停止回数が多く、1極のみ停止が6回、両極とも停止が2回の合計8回停止している。8回とも大体1日で回復しているが、回復に3日かかった例もある。

 2012年1月には大トラブルが発生している。錨を下ろしたまま航行していた船が、連系設備の海底線に錨を引っ掛けてしまい、1本のケーブルが断線したのだ。このトラブルでは、回復まで67日もかかっている。

 北海道・本州間連系設備は、第1極と第2極に加えて帰線(アースにつながる線)1本の合計3本で運用している。2012年の事故では帰線が切れてしまい、残った2本のどちらかを帰線として30万kWの送電を続けた。連系設備を保有している電源開発は、断線が発生しても60万kWの送電を続けられるように、今夏に予備ケーブルを1本敷設した(図2)。

図2 北海道・本州間連系設備の海底ケーブルに予備ケーブルを追加することで、ケーブルが切れたとしても送電を続けられるようにした

 予備ケーブルを1本用意することで、どの線が切れても予備ケーブルをその代わりとして使えるようになる。ケーブルが1本切れるだけならば60万kWの送電能力を維持できる。2本が切れると、現状では送電が完全に停止してしまうが、予備ケーブルがあれば30万kWまでなら送電を続けられる。

 電源開発は地上の送電施設にも対策を打っている。過去のトラブルの原因を見ると、海底ケーブルよりも地上の送電施設が原因であることが多い。電源開発は部品を事前に交換するなどの対策でトラブルを未然に防ぐだけでなく、トラブルが発生したとしても素早く復旧できるように監視体制と保守体制を強化するとしている。

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