寒くても需要は減った、北海道に見る今冬の電力事情電力供給サービス

北海道で7%の節電目標期間が3月8日で終了した。例年以上に寒い冬ながら、電力の需要は予測を下回り、心配された電力不足も起こらなかった。北海道電力の分析によると、気温を考慮したうえでの需要の減少幅は25万kWで、最大電力と比べても4%以上の節電効果が見てとれる。

» 2013年03月13日 09時00分 公開
[石田雅也,スマートジャパン]

 まずは無事に冬のピークを乗り切ることができて、ひと安心だ。寒さの厳しい北海道で電力が不足することは死活問題になりかねない。発電設備の維持・増強に取り組んだ北海道電力の関係者、そして節電に取り組んだ企業や家庭の努力の結果である。

 実際に今冬の電力需給には予想以上に余裕があった。それは「供給予備力」を見ると明確にわかる。

予備率は常時10%以上をキープ

 供給予備力は電力会社の供給力から当日の最大電力(需要)を引いた数値で、これが供給力に対して3%を切ってしまうと、電力不足に陥る危険性が高い。今冬の北海道で供給予備力が最小になったのは1月17日(木)の53万kWだった(図1)。

図1 日別の供給予備力(2012年12月1日〜2013年2月28日)。出典:北海道電力

 当日は複数の発電所でトラブルが発生していた。最大電力が発生したのは17時台で534万kWである。それでも予備率は10%近くあり、十分に余裕のある水準を維持することができた。ただし供給力の中には本州から余剰電力を融通してもらうことを含んでいる。

 北海道で電力不足が予想される場合には、本州から余剰電力を融通することになっている。これを「北本受電」と呼んでいて、最大60万kWまで電力を受けることが可能だ。ところが供給ルートにトラブルが発生することがあり、最悪の場合には本州からの電力融通がゼロになってしまう。今冬も北海道で電力不足が懸念された理由のひとつがこの点にあった。

 供給予備力が最小になった1月17日にも20万kWの北本受電を見込んでいて、これがないと供給予備力は53万kWから33万kWに減少する。その時の予備率は6%である。ということは北本受電がなくても、まだ供給力に余裕があったわけだ。今冬の需要レベルであれば、北本受電のトラブルが大きな影響を与える心配はない。北海道の電力不足を回避するために原子力発電所を再稼働させる理由が、またひとつ消えたと言える。

気温は2010年度の冬よりも低かった

 今年の冬は例年以上に気温が低く、北海道や東北・北陸などでは雪の被害が相次いだ。過去20年間に北海道で最大電力を記録した日の平均気温を見ると、2012年度は4番目に低いマイナス8度だった(図2)。直近の3年間では最も気温が低かったにもかかわらず、逆に最大電力は大幅に減っている。

図2 年度別の最大電力と当日の平均気温。出典:北海道電力

 最大電力が過去最高だった2010年度と比較すると、気温差を考慮したうえで、2012年度の冬は23万kW程度の需要が減少したことになる(図3)。さらに雪の影響を加えると減少幅は25万kWに拡大する。需要の減少分は節電効果によるものと北海道電力では推測している。

図3 日平均気温と最大電力の関係(2010年度と比較)。出典:北海道電力

 節電率にすると5%弱で、目標の7%には届かなかったものの、寒さが厳しかった状況を考えれば十分に大きな効果である。月間の電力使用量を見ると、特に製造業を中心とする産業用の減少率が大きく、節電対策に加えて自家発電設備による電力の自給体制が一段と強化されたことを示している(図4)。

図4 用途別に見た電力量の減少率(2010年度と比較)。出典:北海道電力

 次の2013年度の冬には、省エネ機器の導入などによって企業や家庭の節電効果がさらに拡大することは確実だ。一方で電気料金の値上げが想定されることから、自家発電設備の増強も進むだろう。これからも電力会社の需要は減り続けていく。

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