夏の供給力は太陽光と風力で増えず、保守的すぎる政府の電力需給見通し自然エネルギー

万一にも電力が不足しないことを目的に、政府の委員会が極めて保守的な夏の需給見通しをまとめた。電力会社からの報告をもとに、太陽光や風力などの再生可能エネルギーによる供給力を昨年夏の実績よりも低く想定している。今夏も電力需給の予測と実績に大きな開きが出るだろう。

» 2013年04月18日 17時00分 公開
[石田雅也,スマートジャパン]

 需要は最大に、供給力は最小の状況を想定する。これが政府の電力需給検証小委員会の基本方針である。夏の電力需要は気温が高かった2010年度を前提に見積もり、企業や家庭の節電効果はアンケート調査をもとに減少を見込む。一方の供給力は不安定な要因を排除した最低ラインで設定する。当然ながら実際の供給力は大きく余り、電力会社のコストを増加させる結果になる。

 特に供給力を不安定にするのは水力、太陽光、風力といった再生可能エネルギーで、天候によって発電量が変動する。このため電力会社は最低限の供給力しか見込まない。例えば水力発電は1か月間のうちで水量が最も少ない5日間の平均値を過去30年間にさかのぼって算出する(図1)。2012年度の夏は全国の供給力を合計すれば予測と実績はほぼ合っていたが、地域別にみると東京と関西で大きな開きがあった。

図1 水力発電による供給力の算出方法と2013年度夏季の見込み。出典:電力需給検証小委員会

 太陽光発電も同様の算出方法をとる。毎年の7月〜9月で電力需要が最も多かった3日間の日射量を過去20年間にわたって集計し、そのうち最低の5日間の平均値を計算して発電量を見込む。これ以上ない保守的な算出方法だ。

 その結果、2012年度の夏は全国の合計で35万kWの予測に対して実績は約4倍の121万kWを記録した(図2)。この1年間に固定価格買取制度によって太陽光発電システムは急増しており、今夏は供給力が大幅に増えることは確実である。それでも委員会の予測は前年の実績よりも少ない119万kWである。

図2 太陽光発電による2013年度夏季の供給力の見込み。出典:電力需給検証小委員会

 さらに風力発電がある。2012年度の夏は全国を合計すると、需要のピーク時だけでも13万kWの供給力を発揮した。しかし今夏の見通しには加えていない。その理由として委員会は、風力がピーク時に十分な発電量を供給できない可能性を挙げている。

 実例として北海道における過去3年間の冬季の状況を委員会は提示した。電力需要がピークの時に風力発電の出力がゼロに近いケースも多くあることを示している(図3)。とはいえ2012年度の冬は北海道だけでピーク時に6万kWの実績があり、これは北海道全体の需要の1%を超える規模になる。全国の合計では81万kWの電力を風力発電が供給した。

図3 需要のピーク時における風力発電の出力(冬季の北海道電力管内)。出典:電力需給検証小委員会

 最近では太陽光発電や風力発電による電力を大型の蓄電池で安定化させる取り組みが全国各地で進んでいる。今後は再生可能エネルギーの供給力を実態に近い形で見積もる方法を採用すべきである。

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