特集
» 2013年04月19日 11時00分 UPDATE

自然エネルギー:灼熱の国に向く再生可能な「太陽熱発電」、数百MWが可能 (1/2)

太陽エネルギーを直接利用する発電方式は太陽電池だけ。これは誤った常識だ。低コストで電力を得られる集光型太陽熱発電の大規模化が進んでいる。どのような特徴がある発電方式なのか、どの程度の発電量が可能なのか、日本企業の動向は? 現状と将来の姿を紹介する。

[畑陽一郎,スマートジャパン]

 太陽をエネルギー源とする発電方式は太陽電池だけではない。「集光型太陽熱発電」(CSP)もある。太陽光を鏡などで集め、熱を使って蒸気を作り、発電する。いわば太陽を使った火力発電だ。

 集光型太陽熱発電所は既に大規模実用化への道を歩んでいる。例えば、2013年3月にはアラブ首長国連邦アブダビに出力100MWの集光型太陽熱発電所Shams 1が完成した(図1)。米Googleなどが出資する発電所Ivanpah Solar Electric Generating System(カリフォルニア州モハーベ砂漠)は、2013年内に完成を予定しており、最大出力は392MWとさらに巨大になる。

yh20130419Hitz_Shams1_400px.jpg 図1 Shams 1発電所。出典:アブダビMasdar

 安価で可動部がなく、メンテナンスもたやすい太陽電池が普及しているにもかかわらず、蒸気などを使う集光型太陽熱発電所が建設されるのはなぜだろうか。幾つかの理由がある。

 一番簡単な理由は材料コストだ。半導体部品を必要とせず、金属板(鏡)とパイプ、タービン、発電機という高コストではない部材を使うからだ。

 安定した出力が得やすいという理由も大きい。集光型太陽熱発電では、日照が陰っても出力の変動が小さい。日没後にも余熱を利用して小規模な発電を維持できるほどだ。太陽電池よりもピークシフトに貢献できることになる。例えば2011年にスペインのセビリアに完成したGemasolar集光型太陽熱発電所(最大出力19.9MW)は、溶融塩に蓄熱した後に発電する仕組みだ(図2)。日没後15時間発電を維持できるため、冬季においても24時間送電が可能だ。

yh20130419Hitz_Gemasolar_400px.jpg 図2 Gemasolar発電所。出典:スペインTorresol Energy

 変換効率でも利点が2つある。まず、極端な高温にさらされる土地では太陽電池の変換効率が寒冷地と比べて下がってしまう。次にシリコン太陽電池は例え品質の高い単結晶を使ったとしても変換効率を30%よりも高めることはできない。しかし、集光型太陽熱発電は違う。太陽光を熱に変える効率は100%に近く、太陽熱を利用した熱機関の効率は最大40%以上にできる。つまり理想的な条件であれば、集光型太陽熱発電は効率40%を超えるということだ。

 集光型太陽熱発電の適地は、年間の日照強度が大きい地域。サハラ砂漠周辺、アラビア諸国、オーストラリア、北米南部などだ。スペインには100MWを超える発電所が10カ所以上あり、国別では最も導入が進んでいる。

 国際エネルギー機関(IEA)の「Energy Technology Perspectives 2012」によれば、集光型太陽熱発電の潜在能力は高く、2030年から2050年にかけて、全世界を合計すると太陽光発電とほぼ同等の発電量を見込むほどだ。

各種方式が競う

 現在主流の集光型太陽熱発電の方式は4種類に大きく分かれる。トラフ式、フレネル式、タワー式、ビームダウン式だ*1)。いずれも太陽光を鏡で集中して液体(熱媒)を加熱する。

*1) このほか、電波望遠鏡のような形状、すなわち直径数mのパラボラ型の鏡(ディッシュ)1枚1枚にマイクロタービンなどを配置したディッシュ式も研究の初期段階にある。

 トラフ式は雨どいのような形をした鏡の中央に液体の流れるパイプ(集熱管)を通して加熱するというもの。アラブ首長国連邦のShams 1はこの方式。鏡のサイズは長さ数m程度のもの。フレネル式はトラフ式と似ているが、鏡が平面状だ。上方にある集熱管を加熱する点はトラフ式と似ている。

 タワー式では可動式の平面鏡を数百〜数千枚、円形に並べ、その中央に高さ数十mのタワーを立て、タワーの先端に集熱器を配置する。スペインのGemasolarやカリフォルニアのIvanpah Solar Electric Generating Systemがこの方式を採る。ビームダウン式はタワーではなく、円すい状のミラーを高い位置に釣り、直下の集熱器に光を真上から照射する(ビームダウン)。

 トラフ式は最も歴史があり技術が成熟している。大規模化にも向く。しかし、熱損失が大きい。1カ所に(点状に)光を集中できないため、高温を得にくい。そのため、最高効率が下がる。さらに鏡が固定されているため、太陽高度に応じて光を最大限集めることが難しい。システム効率は15%程度だ。フレネル式は集光倍率が低いため、8〜10%とトラフ式よりもさらに効率が劣るが、製造コストを抑えやすい。さらに曲面部分がないため、風の影響を受けにくい。砂漠では大面積の土地を得やすく、強風の影響が大きいため、フレネル式は魅力的だ。

 タワー式はトラフ式、フレネル式とは逆の特徴がある。比較的少ない面積で発電ができ、光を一点に集めて高温が得られるため効率が高い。20〜35%程度だ。太陽の動きも追尾できる。その代わり、鏡1枚1枚を時々刻々とコンピュータ制御しなければならない。システムコストが上がるということだ。ビームダウン式はタワー式とほぼ同じだが、光が集まる集熱器が地上にあるため、メンテナンス性に利点がある。

       1|2 次のページへ

Copyright© 2016 ITmedia, Inc. All Rights Reserved.