再生エネに向く「NAS電池」の復活、イタリアに70MW分が輸出蓄電・発電機器

電力は貯蔵できる、これがNAS電池のうたい文句だ。小型化にこそ向かないが、大容量で大出力のシステムを作りやすい。2011年の火災事故を受けて、出荷が途絶えていたが、このほど新規受注に成功。再生可能エネルギーとの組み合わせにも向くため、風力やメガソーラーが急速に伸びている国内にも適するだろう。

» 2013年05月20日 07時00分 公開
[畑陽一郎,スマートジャパン]

 日本ガイシは2013年5月、NAS電池システムの供給に関して、イタリアの大手送電会社Ternaと基本契約に合意したと発表した。Ternaはイタリア南部*1)の複数箇所の変電所にNAS電池システムを分散設置する計画だ。Ternaによれば、欧州において電力系統に大容量蓄電池が導入される初の案件だという。

*1) イタリアでは2012年の太陽光発電による発電量が前年比72%増、風力発電が増34%増と拡大している。さらに、イタリア南部は人口1人当たりの太陽光発電システムの導入規模がドイツ南部やスペイン中央部、ギリシャ北部と並んで450Wを超えている。

 日本ガイシはTernaに対し、2014年度に出力3万5000kW(35MW、容量24.5万kWh)のシステムを納入する。その後、さらに同量を納入することが決まっており、合わせて7万kW(70MW)となる*2)

*2) 日本ガイシは2010年2月時点で、出荷したシステムの累計出力を300MW以上(納入先は200カ所以上)と公表していた。

 NAS電池は、変電所などに設置可能な大出力が得られる大型電池としてこれまで有力な選択肢だと考えられてきた。ところが、2011年9月に納入先で火災事故が発生。再発防止策を打つものの、いったん生産・販売を中止したため、2012年度の出荷実績は全くなかった。Ternaとの契約は、火災後初の新規契約である*3)

*3) 生産・販売中断以前の2009年にアラブ首長国連邦のアブダビ水利電力庁からNAS電池システムの受注を受けているため、出力6万kW(60MW、容量36万kW)のシステムを、Terna向けよりも早く2013年度に出荷する。なお、当初の契約では出力30万kWのシステムを納入することになっていた。

NAS電池とは

 NAS電池は日本ガイシが東京電力と共同開発した大容量蓄電池(図1)。2003年に量産を開始している。4500回の充放電が可能で、寿命が15年程度と長いことが特徴。重量当たりに貯えられる電力量はリチウムイオン蓄電池とほぼ同等だ(110Wh/kg)。

図1 青森県六ヶ所村の風力発電所に設置された出力3万4000kWのシステム。出典:日本ガイシ

 300℃程度に保った溶融ナトリウム(Na)と溶融イオウ(S)をセラミックスの一種であるベータアルミナ管を挟んで保つ構造を採っているため、小型・軽量化には全く向かない。MW級の蓄電池として威力を発揮する(図2)。主な用途は、工場などの非常用電源や瞬時電圧低下(瞬低)対策用だ。風力発電所に併設したり、Ternaのように変電所に設置するのは系統負荷を安定化させるためだ。この他、昼夜間の負荷を平準化する、いわば小型の「揚水発電所」として利用する用途も開けている。

図2 2MWシステムの構造。長さ50cmの単電池内にナトリウムとイオウが封入されている。出典:日本ガイシ

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