オフィスや学校などで電力の使用量がさほど多くない場合には、基本料金の決め方が複雑になっている。規模の小さいビルで契約電力が500kW未満になると、毎月の使用量の最大値によって1年間の基本料金が変わる。しかも30分単位の最大値が適用されてしまうので要注意だ。
連載(1):「基本料金を安くする対策」
企業や自治体が電力会社と契約しているメニューは「高圧」が一般的である。オフィスで使う大量の空調機器や照明、コンピュータやエレベータなどに電力を分配するために、家庭よりもはるかに高い6000V(ボルト)の電圧で供給されている。
同じ高圧でも契約電力が500kW以上か未満かで、料金の計算方法が変わってくる。小規模のビルで500kW未満の場合の契約メニューを「高圧小口」と呼ぶことが多い(図1)。500kW以上の場合は「高圧大口」になる。
高圧は小口でも大口でも単価は同じだが、基本料金のベースになる契約電力の決め方に大きな違いがある。高圧小口の場合は「実量制」で契約電力を設定する。名前の通り、実際に使った量で契約電力を決めることになるが、その算定方法が簡単ではない。この仕組みを理解しておかないと、高い基本料金を払い続けなくてはならなくなる。
まず基準になるのは30分単位の電力使用量である(図2)。30分ごとの使用量が1か月間で最も大きくなったところが「最大需要電力」になる。本来は最大需要電力を契約電力とみなすのが妥当だが、実量制ではそうならない。過去12か月間の最大値が契約電力になる。
例えば真夏の昼間の30分間に極端に多くの電力を使ってしまうと、それが以後12か月間の契約電力になり、基本料金が高くなる。翌月以降の最大需要電力が低くなっても、基本料金は下がらない。逆にもっと多くの電力を利用する30分間があると、さらに契約電力が上がる仕組みになっている(図3)。
このような複雑な契約電力の決定方法は、ごく最近まで一般には知られていなかった。おそらく現在でも実量制を意識しないで電力を使い続けている企業は少なくないだろう。その結果、基本料金が何割か高く請求されることになる。
契約電力が500kW未満の高圧小口で契約している場合には、改めて毎月の請求書を確認してみたほうがよい。電力会社によって違いはあるが、当月と過去の最大需要電力が記載されているはずだ(図4)。
もし最大需要電力が極端に大きい月があれば、節電対策を徹底することによって、1年後の基本料金を大幅に抑えられる可能性がある。ただし30分単位の電力使用量をコントロールする必要があるので、BEMS(ビル向けエネルギー管理システム)を導入するのが望ましい。きめ細かく節電を実施すれば、基本料金だけではなく、月間の使用量に応じて課金される電力量料金も安くなる。
基本料金と電力量料金の単価は、高圧の小口と大口で共通だ。最新の各電力会社の単価を見ると、高圧でも地域による差が大きくなってきた(図5)。低圧の単価と同様に、中部電力と北陸電力が安くて、東京電力と沖縄電力が高い。関西電力のように高圧小口(AS)と高圧大口(AL)で契約メニューを分けている場合もあるが、単価は変わらない。
高圧の契約メニューで一般的なのは「業務用電力」である。通常のオフィスビルなどに適用するもので、電力会社によっては月間の使用量に応じて何種類かのプランを用意している(図6)。
このほかに工場を主な対象にした「産業用電力」がある。工場はオフィスビルなどと比べて契約電力が大きくなるケースが多いことから、産業用電力では業務用電力よりも基本料金の単価を低く設定している。その代わりに電力量料金の単価が少し高くなる。
産業用で契約している場合には使用量の抑制が重要だ。さらに電力の使用量が多くなる中・大規模ビルに対しても、業務用と産業用の契約メニューがある。
連載(6):「中・大規模ビル向けのメニュー」
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