発電コストに影響する「設備利用率」キーワード解説

同じ1MW(メガワット)の発電設備でも、太陽光と風力では実際の発電量が違う。さらに火力や地熱になると、1MWの設備で発電できる電力の量はもっと多くなる。発電に使うエネルギーの種類によって「設備利用率」に差があるためで、事業者にとって重要な発電コストに大きな影響を与える。

» 2013年07月12日 15時00分 公開
[石田雅也,スマートジャパン]

 発電設備の能力は「最大出力」で表すことが多い。その設備が最高の性能を発揮した時に生み出す電力の大きさである。なぜ最大値で示す必要があるのか。どんな発電設備でも、常に一定の性能を発揮することはできないからだ。特に太陽光発電や風力発電は気候によって発電量が大きく変わる。

 個々の発電設備が1年間にどのくらいの電力を作ることができるのか。その指標になるのが「設備利用率」である。理想は100%だが、年間を通じて最大出力を発揮し続けることは現実にはありえない。商用レベルの設備では最高でも80%程度である。

 例えば地熱発電は地下から安定して蒸気が吹き上がってくるので、80%という高い効率で発電することができる。火力や小水力、バイオマスや原子力の設備利用率も60〜80%と高い。これに対して風力発電は20〜30%、太陽光発電は現在のところ12%が標準的である(図1)。風は速度や方向が変わり、太陽は晴れた昼間にしか照らないからだ。

図1 電源別の発電コスト(画像をクリックすると拡大)。出典:コスト等検証委員会

 事業者が利益を出すために最も重要な点は、「発電コスト」が低い設備を運営することである。発電コストは設備の運営期間を通じてかかる総コストを、実際の発電量で割って計算する。総コストには設備の建設費、運転維持費、燃料費が含まれる。あらかじめ総コストと設備利用率を想定できれば、発電コストは次の計算式で求めることができる。

 年間発電量(kWh)=最大出力(kW)×24(h)×365(日)×設備利用率(%)÷100

 発電コスト(円/kWh)=総コスト(円)÷運転期間(年)÷年間発電量(kWh)

 再生可能エネルギーの固定価格買取制度を利用して売電する場合には、買取価格と発電コストの差額が粗利益になる。メガソーラーを例に計算してみよう。最大出力が1MW(メガワット)の場合、設備利用率を12%とすると、年間発電量は以下のように計算できる。

 年間発電量=1000(kW)×24(h)×365(日)×12(%)÷100=105万1200(kWh)

 総コストはどのくらいになるのか。資源エネルギー庁の調査では、メガソーラーの建設費は1kWあたり25万円、運転維持費は同じく1kWあたりで年間1万円が標準的である。太陽光発電は燃料費がかからないので、建設費の2億5000万円と運転維持費の年間1000万円で済む。買取期間の20年間を合計すると4億5000万円になる。

 発電コスト=4億5000万(円)÷20(年)÷105万1200(kWh)=21.4(円/kWh)

 2013年度に認定を受けた太陽光発電の買取価格は36円/kWhと決められている。発電コストの21.4円/kWhとの差が粗利益になるわけだ。実際には太陽光パネルの劣化などによって年間の発電量は次第に少なくなっていくが、それでもよほど性能が落ちなければ十分に採算が合う。こうして設備利用率をもとに発電事業の採算性を判断することができる。

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