(続報)なぜ池に浮かべたのか、どうやって実現したのかメガソーラー自然エネルギー(1/2 ページ)

桶川市に完成した日本初の水上メガソーラー「ソーラーオンザウォーター桶川」。出力1.18MWの発電所だ。だが、なぜわざわざ池の上に設置したのか、空き地は他になかったのか。桶川市の担当者と、設置した事業者に聞いた。

» 2013年07月25日 13時00分 公開
[畑陽一郎,スマートジャパン]
図1 桶川市とメガソーラーの位置。近くを上越新幹線が通る。

 「池に浮くメガソーラーが運転開始、日本初の水上式で1.18MW」では、埼玉県の桶川市に建設された珍しいメガソーラーについて紹介した(図1)。

 埼玉県の東部にある桶川市で、水量調整用の池の水面に、4500枚の太陽光パネルを設置し、1.18MWの出力を得たというものだ(図2)。温度条件が良いために発電量が10%ほど増えることをメリットとして紹介した。だが、それだけのためにわざわざ池の上に建設したのだろうか。そうではない。

図2 後谷調整池に浮かぶ「ソーラーオンザウォーター桶川」の外観。出典:ウエストホールディングス

 そもそもなぜここに池があるのか。桶川市を含む埼玉県東部には東京湾に注ぎ込む中川(元荒川)の支流が多い。この一帯は平坦な土地が広がっているため、まれに発生する集中豪雨の際に、放っておけば川が氾濫する。調整池は増水時の水をいったん貯える役目があるのだ。地域には、後谷調整池の他にも数十の調整池が点在している。

 桶川市の狙いは、行政財産である「後谷調整池」を何とか活用できないかというもの。調整池はどうしても必要であるため、行政財産として確保されている。しかし、市にとってはふだんから維持管理費がかさむばかりで税収も得られず、収益という面では「負」の財産だった。調整池にメガソーラーを誘致した市の狙いは、負の値を正の値に変えるというものだ。

 「1m2当たり150円という行政財産の使用料の他、固定資産税も得られ、調整池の維持管理をメガソーラーの事業者の義務としたため、市にとっては濡れ手に粟のような条件である」(桶川市環境課)。後谷調整池の場合、設置面積が1万2400m2ある。これは市にとって186万円の使用料が新たに得られることを意味する。今回メガソーラーを建設・運営するウエストホールディンググループに対して、隣接する地方自治体の他、全国から声がかかり、早くも順番待ちの状態になっているのはこのような好条件を聞きつけたからだ。

事業者の持ち出しにならないか

 このような好条件は裏を返せばメガソーラーの事業者に多大な負担がかかっていると言うことではないのだろうか。1回限りの「慈善事業」にならないか。

 「桶川市のメガソーラーの維持管理コストは、地上設置型メガソーラーの維持管理コストと同程度の水準だ。地上設置型の除草作業にはそれなりにコストがかかる」(ハウスケア代表取締役社長の荒木健二氏)。同社はウエストホールディングスグループで資材の調達を担当する企業だ。

 市もメガソーラー建設に対して敷居を下げようと工夫している。「行政財産を貸し付ける場合、法により1年が上限だ。だが、1年ごとに契約を更新するという条件で水上型メガソーラーを引き受ける事業者はいないだろう。そこで契約の前に、20年間の利用を可能とする趣旨の基本協定を結んだ」(桶川市環境課)。

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