BEMSの補助金終了まで1カ月、目標達成が厳しい現状と2つの問題点補助金

中小規模のビルを対象に2012年度から始まったBEMS(ビル向けエネルギー管理システム)の補助金の申請期限が10月末に迫ってきた。当初の予定よりも4カ月早く終了することになり、残り1カ月の時点で申請件数は目標を大きく下回る7320件にとどまっている。不振の要因は2つ考えられる。

» 2013年10月01日 13時00分 公開
[石田雅也,スマートジャパン]

 経済産業省がBEMS(ビル向けエネルギ管理システム)の補助金制度の目標に掲げた導入件数は当初2年間で1万件だった。これに対して導入を促進する23グループからなるアグリゲータの目標値は合計で6万件を超えた。各社とも具体的な成算があってのことだったが、現状では目標を大きく下回る状況だ。

 最新の9月27日時点の集計によると、補助金の申請件数は7320件である。経済産業省の目標に対して7割強、アグリゲータが設定した目標に対しては全体で1割強の低い水準にとどまっている(図1)。大半のアグリゲータは目標値の半分にも到達できていない。

図1 アグリゲータ別に見たBEMS補助金の申請事業所数(2013年9月27日現在)と各社の目標値。補助金を運営する「環境共創イニシアチブ」による集計

 この補助金は東日本大震災の復興関連予算を適用したことから、予算執行の厳格化によって予定よりも4カ月早く終了することが先ごろ決定した。申請期限は当初の2014年2月末から2013年10月末に前倒しになり、ますます目標の達成が難しくなっている。

 申請件数が伸びない理由として、当初から指摘されてきた問題点が2つある。1つは経済産業省から委託を受けて補助金制度を運営している一般社団法人「環境共創イニシアチブ」の審査の問題である。審査項目が多岐にわたり、手続きを完了するまでの手間と時間が予想以上にかかる。多くの役所に共通して見られる弊害の典型だ。

 もう1つの問題はビル側にある。中小規模のビルにはテナントでフロアを貸す形式のものが多い。通常はビルの管理会社が電力会社と一括で契約して毎月の電気料金を支払い、各テナントに割り振る。テナントごとの電気料金は毎月の使用量に単価を掛けて計算するが、この単価には管理費を上乗せするのが一般的だ。

 となると、ビル全体にBEMSを導入して各テナントが電力の使用量を削減してしまったら、管理会社の収益が減ってしまう。ビルの管理会社にとっては、わざわざコストをかけてBEMSを導入する意味がない。ビル管理の根本的な問題であり、国や自治体が中小規模のビルに対しても電力使用量の削減を義務付けるしか解決策はないように思われる。

 とにかく100億円を超える巨額の国家予算を使った補助金制度を実施したわけで、経済産業省は目標未達の要因を含めて早急に結果を分析したうえで今後の対策を発表する必要がある。BEMSを導入していない事業所のヒアリングなども必要だろう。このままでは中小規模のビルにBEMSが普及していかない可能性が大きい。

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