太陽熱と地中熱を生かす技術、給湯利用が多い施設に適するスマートハウス(1/2 ページ)

大和ハウス工業は法人顧客の建築物を対象として2020年までに環境負荷ゼロを目指す「Smart-Eco Project」を進行中だ。8つ目のプロジェクトでは自然熱の利用を重視している。給湯の比重が大きい介護施設で取り組む。

» 2013年10月04日 09時00分 公開
[畑陽一郎,スマートジャパン]

 スマートハウスというと、太陽光発電を使い、電力の利用効率を高めて実質的な消費電力を抑える試みが多い。電力以外には改善点はないのだろうか。

 「熱」がある。大和ハウス工業は太陽熱と地中熱を利用して給湯に必要なエネルギー削減を試みる。目標は給湯時に排出される二酸化炭素(CO2)の量を1990年比で約70%削減することだ。今回の取り組みを、次世代環境配慮型介護施設「D’s SMART SILVER(ディーズ スマート シルバー)」と呼び、開発した技術を今後設計、施工する介護施設に採用していくという。

 実証実験の場となるのは、北九州に本社を置くシダーの介護施設「あおぞらの里 甲府南デイサービスセンター」(甲府市国母)だ。大和ハウス工業が新築の建築物として立ち上げ、2013年10月から1年間実証実験を続ける。その後、3年間はシダーが実証実験を引き継ぐ*1)

 図1にあるように923.85m2の敷地へ地上2階建の施設を置いた。建築面積は474.79m2、延床面積は497.29m2

*1) 今回の実証実験は、新エネルギー導入促進協議会が実施する2013年度の「再生可能エネルギー熱利用加速化支援対策事業」(経済産業省)の補助事業に選出されており、4年間の利用状況報告が義務付けられている。

図1 あおぞらの里 甲府南デイサービスセンターの全体像。出典:大和ハウス工業

 なぜ熱の研究に介護施設が関係するのだろうか。一般的なデイサービスでは、サービス利用者がほぼ毎日入浴するため、大量の湯が必要になるためだ。この湯を作り出す際に、太陽熱と地中熱を生かす。

 日射量が多い夏季の晴天ではほぼ全ての給湯を太陽熱で実現できるという試算だ。雨天や曇天、さらに夜間は太陽熱を利用できない。このようなときは地中熱を利用したヒートポンプに熱源を切り替える。実際には太陽熱と地中熱が複雑に結合したシステムを使う(図2)。

図2 太陽熱と地中熱を利用した給湯システム。出典:大和ハウス工業

 太陽熱を得る設備(集熱器)は屋根上に並べられており、そこを低温の冷媒が通過する。すると冷媒の温度が上昇し、ストレージタンクの外周に向かう。ストレージタンクには水道水が供給されており、55度になるまで熱を受け取る。

 地下10mより深いところの地温は一定に保たれている。地中熱利用とはその熱量を吸い上げることをいう。「約100mの採熱用チューブを敷設した」(大和ハウス工業)。地温と同じ温度になった冷媒は地下熱ヒートポンプに向かい、先ほどの太陽熱温水に熱を受け渡す。地中熱ヒートポンプはエアコンの室外機と同じ仕組みで動いており、冷媒を圧縮・膨張させることで、少ないエネルギーから多くの熱を作り出すことが可能だ。このため、高効率ガス給湯器を単独で利用した場合に比べて大きく投入エネルギーを削減できる。

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