電気自動車とスマートハウスが生き生きと結び付く、鍵は予測モデルを使った先回り制御電気自動車(1/2 ページ)

名古屋大学とデンソーは電気自動車が内蔵する電池を使った実証実験を開始する。実は難しい、スマートハウスと内蔵電池の最適制御を実現するプロジェクトだ。

» 2013年10月04日 11時00分 公開
[畑陽一郎,スマートジャパン]

 名古屋大学とデンソーは2013年10月から電気自動車(EV)の車載電池を使ったエネルギー管理システムの実証実験を開始する*1)

 EVの車載電池から家庭へ電力を送る「V2H(Vehicle to home)」はもはや目新しい技術ではなくなった。V2H用の機材が販売されており、非常時にEVの電池から電力を取り出すといった用途をうたっている。ではなぜ、今から車載電池を使った実証実験なのだろうか。

*1) 経済産業省が進めている「次世代エネルギー・社会システム実証事業」の1つである「豊田市低炭素社会システム実証プロジェクト」で実施する。

内蔵電池の能力を引き出せていない

 これまでのV2Hでは内蔵電池の容量を表示することができ、ユーザーが指定した時間に充放電ができた。だが、これは内蔵電池の使い方としては必要最小限のものだ。経済的に最も有利な時刻に充電が自動的に始まり、停止して欲しい。もちろんEVを使いたいときにはきちんと走行用の容量が確保されているべきだ。

 このような「夢」を実現するには、ユーザーがどのようなパターンでEVを使うのか、家庭内の消費電力は1日の中でどのようなカーブを描くのかというデータが必要だ。太陽光発電システムが備わっていれば、システムの発電実績データも欲しい。

 このようなデータがそろった上で、予測モデルが必要になる。ある1日がその前の1日と全く同じになることはない。家庭内の電力需要や車を利用する時間と走行距離*2)、太陽光の発電量を前日までのデータに基づいて予測する仕組みがなくてはならない。

 確度の高い予測ができて初めて、内蔵電池をいつ充電し、いつ放電するかというスケジューリングが可能になる。

*2) デンソーは車載電池の難しさを、「EMSへの接続(駐車)と離脱(走行)を繰り返す特殊な蓄電池であり、有効利用するには駐車時間帯の予測と家庭内の電力需要に応じた充放電制御が必要」と表現している。

統合電力制御装置を作り上げる

 以上の道筋のうち、辛うじて実現しているのはデータを収集する部分、それも消費電力と太陽光の部分だけだ。これが実証実験を進める理由である。

 名古屋大学とデンソーが描いているシステムの完成形を図1に示した。左上の(1)の部分で各種データを集め、モデルを作ったのち、下の(2)で需要を予測、それに従って右上の(3)で内蔵電池の充放電計画を立案するという流れだ。

 「収集したデータを受け取り、モデルに従って予測、計画を立案するのは、図1にある『統合電力制御装置』である。実証実験では予測や立案をクラウドなどに任せるのではなく、この制御装置が担う形にする」(デンソー)。

図1 実証実験で組み上げるシステムの概要。出典:デンソー
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