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» 2013年11月20日 14時40分 UPDATE

発電・蓄電装置:深海でも電気が手に入る、空気がなくても使える燃料電池とは (1/2)

海洋研究開発機構(JAMSTEC)は深海の調査に役立つ燃料電池システムを三菱重工と共同で開発、2013年11月には相模湾で実海域試験に成功した。今後は海面下3000〜6000mを自律動作できるロボット探査船に向けて出力を高める開発を続ける。

[畑陽一郎,スマートジャパン]

 海洋研究開発機構(JAMSTEC)は三菱重工と協力し、2013年11月、海中利用に適した新開発の燃料電池システムの実海域試験に成功した。深海巡航探査機などに搭載するための燃料電池だ。

 「海中で動作する観測機器を長時間動かそうとすると蓄電池では重く、巨大になってしまう。この問題を解決するには燃料電池が最適だ」(海洋研究開発機構海洋工学センター海洋技術開発部サブリーダーの百留忠洋氏)。

 開発した燃料電池スタックは約240mm角と小型だ(図1)。「HEML燃料電池スタック」と呼ぶ。燃料電池スタックとは発電の最小単位(セル)を複数枚収納した装置。燃料電池の方式は、水の沸点以下で動作する固体高分子形(PEFC)だ。

yh20131120FC_stack_346px.jpg 図1 HEML燃料電池スタック。出典:JAMSTEC

 スタックを2台組み合わせて燃料電池の制御部を取り付けたものが図2だ。図2のうち右側の3分の1が制御部である。システムの直径は600mm、長さが800mm、重量は500kg以下。350W以上の出力が得られる。出力電圧は9V。発電効率が60%と高い(陸上試験時)。燃料には純水素と純酸素を用いる。つまり図2の装置以外にガスボンベが最低2本は必要になる。

yh20131120FC_system_432px.jpg 図2 閉鎖式HEML燃料電池システム。出典:JAMSTEC

 燃料電池システムの試験に用いた船体は全長約3mの「ディープ・トウ」と呼ばれるもの。ディープ・トウは海洋調査船「かいよう」とケーブルでつなぐ深海曳航調査システム。今回は地上で動作した閉鎖式HEML燃料電池システムを初めて海中で試験するため、機器の取り付けが容易で回収に失敗するおそれの少ないディープ・トウを用いたという。

 図3に海面からつり上げたディープ・トウを示す。船体中央に赤い枠で囲われた部分が燃料電池システムだ。神奈川県沖の相模湾で最大180mまで潜行、燃料電池システムを2時間動かし、最大出力200Wを得た。

yh20131120FC_deepto_500px.jpg 図3 燃料電池システムとセンサーを取り付けたディープ・トウ。出典:JAMSTEC

 実海洋試験ではディープ・トウの側面下部に搭載した合成開口ソナー(最大200W)と前部に搭載したpH-CO2ハイブリッドセンサー(最大4.5W)に燃料電池から電力を供給、良好な結果を得たという(図4)。合成開口ソナーは海底の地形の他、海底の「土質」を観測できる優れた目だ。pH-CO2ハイブリッドセンサーは紀本電子工業と共同で開発し、2013年3月に実海洋試験を済ませたばかりの装置。海水の酸性度と二酸化炭素の濃度を同時に計測することで、海底の熱水やメタンガス噴出などの調査に役立つ。有用希少元素が含まれる熱水鉱床やメタンハイドレードの調査にも役立つセンサーだ。

yh20131120FC_overview_590px.jpg 図4 実海洋試験の内容。出典:JAMSTEC
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