スーパーコンピュータも省電力を競う、世界一になった「TSUBAME」省エネ機器

東京工業大学が開発したスーパーコンピュータ「TSUBAME」の最新機が、省エネ性能で世界一になった。国際会議で発表されたランキングによるもので、日本のスーパーコンピュータが省エネ性能の第1位になったのは初めて。独自の油浸冷却システムを搭載して消費電力を大幅に削減した。

» 2013年11月22日 07時00分 公開
[石田雅也,スマートジャパン]

 2011年に理化学研究所と富士通が共同開発した「京(けい)」がスーパーコンピュータの国際会議「SC-11」で世界一のピーク性能を評価されたことは記憶に新しい。その同じ国際会議の場で、今年は東京工業大学のスーパーコンピュータ「TSUBAME(つばめ)」が省エネ性能で世界一に輝いた。

 米国のデンバーで11月17日〜22日に開催中の「SC-13」(スーパーコンピューティングカンファレンス2013)で発表されたランキングによる。世界一になったスーパーコンピュータは「TSUBAME-KFC」と呼ぶテスト機で(図1)、多数のプロセサで構成する計算処理ユニットを油性の冷却溶媒液の中に浸して冷却する点が最大の特徴だ。

図1 スーパーコンピュータ「TSUBAME」の最新機。出典:東京工業大学

 一般に規模の大きいコンピュータではプロセサなどが発生する熱の冷却に大量の電力を必要とするため、冷却効率の改善が消費電力の削減につながる。「TSUBAME-KFC」は油浸冷却技術に加えて、冷却塔から取り入れた大気冷却を組み合わせることで、最新の実用機「TSUBAME2.5」よりも大幅に消費電力を削減することに成功した。

 「TSUBAME-KFC」の1W(ワット)あたりの処理性能は4503MFLOPS(メガフロップス)になり、「TSUBAME2.5」の3069MFLOPSと比べて47%も向上させることができた。その分だけ同じ量の計算処理を実行した場合に消費電力が少なくて済む。

 東京工業大学はNECをはじめとする日米のメーカーと共同でTSUBAME−KFCを開発した。その中の主要な技術は次期の実用機「TSUBAME3.0」に組み込まれる予定だ。

 一方、ピーク性能の最新ランキングでは、「京」が第4位、「TSUBAME2.5」が第11位だった。第1位は中国の国立スーパーコンピュータセンターが開発した「Tianhe-2」で、第2位を2倍以上も上回る圧倒的なピーク性能を発揮する。

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