都心近郊でも外気で冷却、データセンターの消費電力を3割削減省エネ機器

三菱商事は2013年10月、東京都三鷹市でデータセンターの運用を開始したと発表した。都心近郊にありながら、完全外気冷房システムを導入したことが特徴だ。従来のデータセンターと比較して消費電力を約3割削減できるという。

» 2013年10月15日 17時30分 公開
[畑陽一郎,スマートジャパン]
図1 東京都三鷹市とデータセンターの位置

 三菱商事は2013年10月、都心近郊で初の完全外気冷房システムを備えたデータセンターの運用を開始したと発表した。100%子会社のアイ・ティ・フロンティアが運用を担う。

 運用を開始したのは「MCC三鷹ビル サウス棟」(図1、図2)。延床面積は1万4600m2。既に運用中の同ノース棟と合わせて、約4万m2となる。都心からアクセスしやすく、武蔵野台地の堅牢な地盤によって液状化や津波の心配がないことをうたう。

図2 MCC三鷹ビル サウス棟。出典:三菱商事

 電力関連ではエネルギー効率と環境性能に特徴がある。完全外気冷房システムを導入することで、従来型のデータセンターと比較して消費電力を約3割削減できるという。この他、高効率熱源やクールピット*1)、照明用の人感センサーなどを導入したことで、データセンターの電力効率を示すPUE(Power Usage Effectiveness)の値として1.22を実現できた*2)

*1) クールピットとは建物の最下部に外気を通す仕組み。地中熱を利用することで外気よりも低温の空気を得られる。「サーバを冷却するのではなく、特別高圧受変電室と発電機室の冷却に用いた」(三菱商事)。
*2)「PUEの値は外気温などにより変動する。最高効率が得られたときに、PUEが1.22となる」(同社)。

 完全外気冷房システムの動作を図3に示した。サーバラックに至る外気の流れを緑色の矢印で、暖気(排気)の流れを赤色の矢印で示した。冷房システム中、電力が主に必要となるのは外気の導入と暖気の排気に用いるファンだ。

 運用時には外気と室内の空気、排気の温度と湿度を測定している。例えばサーバの負荷によって特定のラックの温度が上がった場合は、「空調機の受け持つエリアごとに制御が可能であり、温度や湿度に応じて取り入れる外気量を増やす」(三菱商事)。「夏季についても外気を取り入れる運転をするが、必要に応じて内気のみの運転、熱源利用モードに切り替えて冷却する」(同社)。高効率熱源として高効率型の空冷モジュールチラーを利用するとした。なお、図3では加湿だけが記されているが、実際には除湿も可能だ。

図3 空調システムの概要。出典:三菱商事

停電や震災に対応

 データセンターは環境性能だけでなく、信頼性も重要だ。国内では特に耐災害性と安全性の高さが必要とされる。MCC三鷹ビル サウス棟では、特別高圧線を本線と予備線の2回路で引き込み、配線と配管、設備を二重化した。この他、自家発電設備を備えており、72時間の発電が可能だ。以上により、日本データセンター協会が定めたデータセンターファシリティスタンダード(J-Tier)のティア4に対応可能だという。

 地震災害に対応するため、免震システムを導入し、地震被害を想定する指標であるPML(Probable Maximum Loss)の値が3.0であることをうたう。東日本大震災クラスの大規模地震が発生したとしても、建物や設備、ユーザー機器への影響を最小限に抑えられるという。

【更新情報】 記事公開後、10月16日に注2を追加しました。

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