大量のサーバを集積しているデータセンターでは、サーバが発する熱を効率良く取り除く必要がある。NTTコムウェアは冷房機器を一切不要としたデータセンターを開発し、このデータセンターを利用したサービスの提供を始める。
NTTコムウェアは、1年を通して冷房機器を不要としたデータセンター「排熱式データセンター」を開発した。当初はNTTコムウェアが管理しているデータセンターの中でも、NTTコムウェアの社内システムを動かしている部分から利用を始める。2012年11月からは、排熱式データセンターにサーバも用意して、クラウドサービスや高速並列処理サービスなどを提供する。
排熱式データセンターは、電力設備やサーバ、ネットワーク機器をパッケージにしたモジュール方式のデータセンター。モジュール単位で増設が可能になっている。NTTコムウェアの従来型データセンターとくらべて、構築費用と運用費用をおよそ45%削減できたという。
内部を冷やすときは、データセンター内部に外気を通過させる。最初に熱を含んだ空気を排気する。すると室内の気圧が下がり、排気した側とは反対側から外気が入り込む。室内には排気ファンがあるので、入り込んだ空気はデータセンターの中を通過して外部に出ていく。この空気の流れでサーバなどを冷やすのだ。
冬場は外気が冷たく、乾燥しているため、外気をそのまま室内に流すと静電気が発生して、サーバが異常を来すなどの問題が発生する。そのため、室内空気を一部逆流させて、加湿器で湿気を与えて空気を流す。
排気式データセンターに必要な空調機器は、排気ファンと加湿器だけということになる。データセンター全体が消費する電力のうち、サーバやネットワーク機器などデータセンターとして主たる機能を担う機器がどの程度電力を消費するかを表す尺度であるPUE(Power Usage Effectiveness)を計算すると1.02になるという。
PUEは1に近づくほど、空調など運転を補助する機器が消費する電力が小さいことを意味する。PUEが1.02ということは、データセンター全体が消費する電力のほとんどすべてをサーバやネットワーク機器だけで消費している計算になる。
NTTコムウェアは排気式データセンターの開発に当たって、2011年11月から実際に稼働させてテストを続けていた。その結果、外気温が30℃を超えるような夏場でも、サーバは問題なく稼働を続け、PUEは1年を通じてほとんど変化しなかったという(図2)。ただし、サーバには40℃の環境でも問題なく稼働する製品を採用しているという。
今後しばらくは、NTTコムウェアが管理するビル型データセンターの一部を利用して運用していくという。排熱式データセンターの技術を活用して、顧客企業のデータセンターに同様の設備を作ることについてはまだ予定していないが、検討はしているという。
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