「霧」の効果は意外に大きい、45%の省エネ可能なデータセンター省エネ機器

外気を使ってデータセンターを冷却する外気冷却。空調用電力を大幅に削減できるため、採用が続いている。しかし、地方型データセンターとは異なり、都市型データセンターに採用すると、夏季には十分な能力が発揮できない場合がある。NTTグループ2社は霧(ミスト)の気化熱を援用するシステムを開発した。

» 2013年11月01日 09時00分 公開
[畑陽一郎,スマートジャパン]

 空調消費電力を45%削減可能なデータセンター向けの省エネ技術「ミスト併用直接外気空冷システム(仮称)」が登場した。通常の空調機に2つの技術を追加したものだ。外気をそのまま冷却に使う「直接外気冷房システム」と、「霧」(ミスト)の気化熱を利用した「ミスト噴霧による蒸発冷却システム」である。

 この方式を採ると、空調用消費電力を削減できるものの、新規設備の導入が必要だ。果たして投資を回収できるのだろうか。「実証実験の条件では、消費電力低減と、構築費や水道料金から投資回収年数を計算すると約8年になる。量産効果によって、5年以下を狙いたい」(NTTファシリティーズ)。

 「実証実験は大阪市内に設置した都市型データセンターで行う。2014年3月までの約6カ月間、当社とエヌ・ティ・ティ・スマートコネクト(NTTSMC)が進めるものだ。実証実験のオーナーはNTTSMC。当社が設計、施工を担当する。その後、1年をかけてNTTSMCが単独で実証実験を継続する計画だ」(NTTファシリティーズ)。実証実験に用いるデータセンターの規模は、20ラック。

省電力以外の狙いもある

 同技術を開発した狙いは複数ある。まずは年間消費電力量を削減することだ。一定の条件下*1)でシミュレーションを実行したところ、外気冷却で37%、ミストで8%、合計45%の空調動力用電力を削減できることが分かった(図1)。

*1) データセンター運用に関する米暖房冷凍空調学会(ASHRAE)の基準のうち、「A1」の条件を用いた。室温の変動(15〜32度)を許し、湿度は20〜80%という条件だ。

 もう1つの狙いは、データセンターの信頼性確保だ。「外気の温度が高いときにも利用できる都市型データセンター向けの技術だ。サーバ吸い込み温度(乾球温度)が15〜27度、相対湿度20〜80%という条件で利用できる。ミストを利用することで外気温よりも4度程度温度が下がる」(同社)。これは夏季など外気が異常に高温になったときにも冷却能力が損なわれないことを意味する。空調機の能力低下や停止を回避することも狙う。なお、外気冷却が全く使えない災害時や異常気象時でも空調機の循環運転により一定の室温を維持できるという。

図1 ミスト併用直接外気空冷システム(仮称)の省エネ効果。出典:NTTファシリティーズ

外気の経路は2つある

 図2に同システムの構成を示した。冷気を青系色で、暖気を赤系色で示している。図右方から外気を取り入れ、ミストノズルから霧を加えて、気化熱によって温度を下げる。その後、2つの経路に分ける(図中には1つの経路しか示されていない)。1つの経路では、空冷ヒートポンプ空調機(空冷HP)の屋外機が発する熱を外気で奪い、そのまま排気する。

 もう1つの経路を通った外気はまずエアフィルターを通過する。水道水中の不揮発成分が粉じんとなって害を与えることを防ぐためだ。その後、混気室を通過して室内機に入り、サーバラックへ向かい、屋外に排気される*2)。一部の暖気は混気室に戻る。これは冬季に使う仕組みだ。図中の記号の意味は、MD(モーターダンパー)、RA(排気吸込)、EA(排気)である。

*2) サーバラックを覆う「アイルキャッピング」とはNTTファシリティーズが開発した既存技術。気流を受動的に制御して、冷却効率を高める効果がある。列をなすラックの間の通路を壁や屋根で区画すると、ラックへの給気(低温)とラックからの排気(高温)を物理的に分離でき、冷却効率が高まる。特定のラックの周辺が過熱する「ヒートスポット」を防ぎやすいという。

図2 ミスト併用直接外気空冷システム(仮称)の構成(クリックで拡大)。出典:NTTファシリティーズ

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