1MWの蓄電池を日立が量産へ、自由市場で電力品質維持に役立てる発電・蓄電機器

40フィートコンテナに1MWのリチウムイオン蓄電池システムを収め、再生可能エネルギーや電力市場の瞬間的な取引に役立てる。日立製作所が狙う大容量蓄電池の用途だ。すでに4〜5台の製造に入っており、2014年初頭には実証試験と並行して製品の出荷を開始する。

» 2013年12月06日 09時00分 公開
[畑陽一郎,スマートジャパン]

 日立製作所は大出力の大型蓄電池「1MWリチウムイオン蓄電システムパッケージ(CrystEna)」を開発した。システム全体をコンテナに搭載したことで出力と比較して小型化したことが特徴だ。風力発電や太陽光発電といった分散型の再生可能エネルギーと組み合わせた用途を狙う。電力需給バランスの維持と系統安定化が目的だ(図1)。

 「2012年度に同システムの開発を始め、2013年12月時点では実証試験用の試作品を4〜5システム製造中だ。実証試験と並行して2014年初頭にも製品の出荷を開始する」(日立製作所)。

 製造中の電池システムは、日立製作所の電力系統制御技術と日立化成のリチウムイオン蓄電池を組み合わせたもの。「出力1MW、容量450kWhという蓄電システムを40フィート、または45フィートコンテナに格納したオールインワンパッケージだ」(日立製作所)。

図1 CrystEnaが取り込んだ技術と適用範囲 出典:日立製作所

実証試験ではアンシラリー市場を担う

 日立製作所の蓄電システムにはどのような用途があるのだろうか。実証試験では系統電力の安定化にどの程度役立つかを検証する。

 電力の自由化が進む米国や欧州では、さまざまな電力事業者が市場を通じて電力を「持ち寄っている」。電力需要が予測と完全に一致することはないため、実需要に市場が追従していく中、ある短い時間内では供給量が需要より多い、または少ないことになる。すると、系統の周波数が高くなる(供給過剰)、または低くなる(供給不足)。このままでは系統電力の品質が下がってしまう。そこで、周波数の安定化を目的として差分の電力を供給する市場「アンシラリー市場」が成立している*1)

*1) アンシラリー市場では周波数制御以外にもさまざまなサービスが取引されている。例えば、発電トラブルなどに備えて即時に大電力を供給するサービスなどだ。

 日立製作所が実証試験の場とするのが、このアンシラリー市場だ。「米国の複数のアンシラリー市場に対して、システムを4台投入する。商用ベースで運用・運転し、能力を確かめる。市場には季節要因があるため、1年程度試験を続ける」(日立製作所)。

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