小水力発電を農業に生かす、設備利用率は87%と高い自然エネルギー(1/2 ページ)

岐阜県中津川市に完成した小水力発電所は売電収益をそのまま農業環境整備に使う。高い設備利用率が得られる立地を選ぶことで実現した。

» 2014年02月14日 18時45分 公開
[畑陽一郎,スマートジャパン]
図1 岐阜県中津川市と発電所の位置

 2014年2月に完成した「加子母(かしも)清流発電所」(岐阜県中津川市加子母)の特徴は農業環境を整備するために作られたこと(図1、図2)。「加子母で小水力発電を始めた理由は、年間約4900万円の売電収益を得ることだけではない。収益を用いて、さまざまな土地改良事業を進めることが目的だ」(岐阜県農政部農地整備課)*1)

 農業用水である加子母小郷(おご)用水の維持管理の他、農業集落排水事業(下水処理)、加子母防災ダムなどの電気料金を売電収益でまかなう形だ。コミュニティセンターなど農林水産省の補助を受けた施設にも用いる。「中部電力への売電を経ているが、農業関連施設12カ所へ間接的に電力を供給している形になる」(農地整備課)。

*1) 県が立ち上げた農業用水を利用する小水力発電所として、東海三県(愛知県、岐阜県、三重県)では初の事例だという。

図2 加子母(かしも)清流発電所の外観 出典:岐阜県

設備利用率が高い理由とは

 これを支えるのが、発電所の高い設備利用率だ。発電所の出力は220kWであり、想定年間発電量は168万kWh(一般家庭400世帯分の年間使用電力に相当)。つまり、年間の設備利用率が87%もある。環境省によれば小水力発電では一般に設備利用率は70%程度だ。

 同発電所は、普通河川白川から取水する小郷用水の水を利用している。「農業用水は非灌漑(かんがい)期には水量が減ることが多い。しかし、白川は水が豊富であり、ほとんどの期間、発電所に0.46m3の水量を供給できる」(農地整備課)。渇水期がないことが設備利用率向上に効いた。前提条件として、白川は普通河川であるため、河川法上の水利権の制約がないことも大きいとした。

       1|2 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.