風力発電:2020年代から洋上へ、大型風車1基で10MW級再生可能エネルギーの未来予測(3)(1/2 ページ)

島国の日本でポテンシャルが最も大きいのは風力発電だ。安全性や環境影響の点で課題が残るものの、ヨーロッパのように太陽光発電を上回るペースで拡大する可能性がある。風車の大型化によって発電コストの低下が進み、2020年代には近海の洋上で商用運転が続々と始まる。

» 2014年03月20日 13時00分 公開
[石田雅也,スマートジャパン]

第2回:「太陽光発電:10年でコスト半減、2020年には石油火力と同水準」

 日本の再生可能エネルギーが欧米の先進国並みに拡大するかどうかは、風力発電の進展に大きくかかっている。土地が狭い島国にあって、沿岸部や近海に膨大な量の風力エネルギーが存在するからだ。

 ところが風力発電の導入量は2006年をピークに、その後は伸び悩んできた(図1)。最大の課題は環境に対する影響が大きいことである。周辺地域の騒音被害や鳥類保護の問題などから、建設計画の中止を余儀なくされるケースが少なくない。発電事業者は用地を慎重に選んだうえで、環境影響を最小限にとどめる対策を求められ、収益を見込みにくい状況になっていた。

図1 風力発電の導入量と増加率。出典:NEDO

 ようやく2012年7月に固定価格買取制度が始まったことによって、風力発電の収益性が長期に保証されて、大規模な開発プロジェクトが全国各地で動き出した。制度開始から1年5カ月が経過した2013年11月末の時点で、買取制度の対象に認定された風力発電設備の規模は900MW(メガワット)に達している。

 これまで日本の風力発電の導入量は累計で約2700MWにのぼるが、その3分の1に相当する設備が新たに誕生する。ただし発電能力が10MWを超える大規模な風力発電所は運転開始までに3年程度を要するため、実際には2016年くらいから導入量が増えていく。

 加えて洋上風力の買取価格を2014年度に新設することが決まった。太陽光発電(非住宅用)よりも高い1kWhあたり36円の単価になる。今後は日本の近海で洋上風力の大型プロジェクトが続々と始まる見通しだ。

風車の大型化が進む、欧米では4MW級が主流

 日本風力発電協会の予測によると、2010年度に244万kW(2440MW)だった風力発電の規模は2020年度までに5倍近い1130万kWに拡大する(図2)。その後は陸上に加えて洋上の風力発電が急速に伸びて、2050年度には陸上と洋上を合わせて5000万kWに到達するロードマップが描かれている。この規模は原子力発電設備50基分に相当する(年間の発電量では15〜20基分)。

図2 風力発電の導入ロードマップ。出典:日本風力発電協会

 洋上風力の中でも大きな期待がかかるのは「浮体式」である。日本の近海には水深50メートルを超える海域が広がっている。発電設備を海底に固定する「着床式」は陸に近い水深50メートル以内の海域に限られるため、海上に設備を浮かせる「浮体式」が有望視されている。

 すでに福島県の沖合で浮体式による2MWの大型発電設備が稼働中で、海洋生物や漁業に対する影響の評価を含めて実証試験を進めているところだ。さらに2014年度中には風車1基で7MWの超大型発電設備が2基加わる予定になっている。

 建設までに時間とコストがかかる洋上風力では、風車の大型化によって1基あたりの発電能力を増強できることが重要になってくる。全世界で導入されている風車の発電能力を見ると、陸上では平均2MWであるのに対して、洋上では2倍の4MWまで上昇している(図3)。商用機で8MWの製品も開発されていて、日本で洋上風力が拡大する2020年代には10MW級の発電設備が主流になる。

図3 風車1基あたりの発電能力。出典:NEDO(EWEAなどの資料をもとに作成)
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