電力会社10社で1兆円を超える利益改善、それでも4社は赤字電力供給サービス

2013年度の電力会社の決算がまとまり、10社すべてが前年を上回る売上高を記録した。営業利益は8社で増加して、合計すると1兆円を超える大幅な改善が見られる。販売電力量が減り続ける中で、電気料金の値上げによる収益改善の効果が顕著になった。にもかかわらず4社は赤字の状態にある。

» 2014年05月02日 15時00分 公開
[石田雅也,スマートジャパン]

 電力会社の売上は順調に回復している。2013年度は10社すべてが増収を果たした(図1)。売上高の伸び率が最も大きいのは関西の16.4%で、次いで九州の15.9%、東北の13.7%、四国の13.3%である。いずれも2013年度に電気料金を値上げした電力会社だ。

図1 電力会社10社の2013年度の売上高と営業利益(連結ベース)

 一方で伸び率が小さかったのは北陸の3.5%、中国の4.7%、中部の7.3%といったところで、電気料金を値上げしないで売上を増やした。ただし各社とも売上が増えた要因は、再生可能エネルギーの買取制度に伴って利用者から徴収する「賦課金」によるものだ。北陸電力を例にとると、5096億円の売上高のうち198億円を賦課金の増加が占めていて、販売電力による収入は前年から27億円も減っている(図2)。

図2 売上高の変動要因(北陸電力の場合)。出典:北陸電力

 この賦課金とほぼ同等の購入費を発電事業者に支払うため、売上が増えても利益につながらない。一方で火力発電が増加して燃料費が前年を上回った電力会社が多い。燃料費の増加に応じて利用者から「燃料費調整額」を徴収しているものの、費用の増加分をすべてカバーできるわけではない。その影響が最も大きく出たのは中部電力である。

 2013年度に各社が利益を大幅に改善している中で、中部電力は前年から400億円以上も損失を増やしてしまった。燃料価格の上昇による影響額が561億円に達したことが大きい(図3)。中部電力は2014年5月から電気料金を値上げするが、その効果で黒字に回復させるためには販売量を維持する必要がある。

図3 経常利益の変動要因(中部電力の場合)。出典:中部電力

 実際に電気料金を値上げしても赤字のままの電力会社がある。北海道・関西・九州の3社だ。関西電力と九州電力は前年から2000億円以上も収益を改善したが、まだ赤字の状態が続いている。

 売上規模を考えると、最も深刻なのは北海道電力だ。いまだに売上高の10%を超える損失を出している。石炭火力を増やしたことで燃料費は前年から132億円も減ったが、販売量も1.8%の大幅な減少率になり、値上げの効果が薄れてしまった。

 値上げを実施して利用者の負担を増やしたにもかかわらず、原子力発電を再稼働できなければ利益を出せないようでは、電力会社の経営者として失格だろう。国から多額の補助金を投入して原子力を稼働させたうえ、電気料金を値上げして売上を増やせるのであれば、誰が経営しても利益は出せる。

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