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» 2014年05月13日 09時00分 UPDATE

エネルギー列島2014年版(5)秋田:日本海沿岸に100基を超える風力発電、買取制度では全国トップ

固定価格買取制度の対象になる風力発電設備の規模で秋田県が全国のトップに立った。日本海に面して防風林が長く続く海岸線は風力発電の絶好の場所だ。すでに秋田県内では29カ所の風力発電所が稼働しているのに加えて、蓄電池を併設した発電所の開発計画も相次いで始まっている。

[石田雅也,スマートジャパン]

 これまで風力発電の導入量では北海道と青森県がトップを競ってきたが、最近は秋田県の躍進が群を抜いている。2012年7月に始まった固定価格買取制度では、わずか1年半のあいだに合計202MW(メガワット)の風力発電設備が秋田県内で認定を受けて、全国で第1位になった(図1)。早くも北海道と青森県の約2倍の規模に達している。

図1 固定価格買取制度の認定設備(2013年12月末時点)

 秋田県の風力発電の特徴は、南北に延びる海岸線に発電設備が集中していることだ。現時点で29カ所の風力発電所で合計120基の風車が稼働中だが、そのうち1カ所の発電所を除いて日本海沿岸に立地している(図2)。

図2 秋田県内で稼働中の風力発電所(2014年2月19日時点)。出典:秋田県産業労働部

 海から吹きつける強い風は風力発電には打ってつけだ。特に秋田市と北部の能代市に風力発電所が多い。この2つの市の沿岸部では、新たに蓄電池を併設した大規模な風力発電所の建設プロジェクトが進み始めた。

図3 「能代風力発電所」の全景。出典:東北自然エネルギー開発

 能代市では海岸線に沿って14キロメートルの長さがある「風の松原」が新しい風力発電所の建設場所になる。この松林の中には、すでに24基の風車が2001年から運転を開始している。東北電力グループの「能代風力発電所」で、発電規模は14MWある(図3)。

 この風力発電所の北側と南側に、10基と7基の大型風車を新設する計画だ。1基あたり2.3MWの発電能力があって合計すると39MWになる。

 2015年から2016年にかけて運転を開始する予定で、完成すれば海岸線に41基の風車が並んで50MWを超える電力を供給できる体制になる(図4)。さらに風力発電所と最寄りの変電所のあいだに大型の蓄電池を設置する。風力発電は天候によって出力が変動するために、地域内に送電する電力を不安定にしてしまう可能性がある。発電した電力を蓄電池に充電すれば、出力の変動分を吸収することができる。

図4 「風の松原」で計画中の風力発電所の完成イメージ(上)と建設計画(下)。出典:風の松原自然エネルギー

 風の松原の発電事業を推進するのは地元の企業が中心になって設立した「風の松原自然エネルギー」である。能代市も出資していて、官民共同で地域の活性化とエネルギーの地産地消を図っていく。能代市は風況の良い沿岸地域を最先端の風力発電を実証する場に発展させる方針で、沖合では洋上風力発電の事業化に取り組む計画もある。

図5 「秋田国見山第一風力発電所」の全景。出典:日立パワーソリューションズ

 同様に風力発電所が数多く集まる秋田市でも先端的なプロジェクトが進んでいる。海岸線から3キロメートルほど内陸に入った国見山の一帯で風力発電が拡大中だ。

 2013年2月に「秋田国見山第一風力発電所」が5基の大型風車で10MWの発電を開始した(図5)。日立グループや地元企業のほかに、秋田市の上下水道局が出資している。

 市の上下水道局が風力発電に乗り出した理由は、重要な生活インフラである上水道を災害時でも止めないためである。東日本大震災では停電によって浄水場の設備がストップして一時的に断水が発生した。そうした事態を防ぐために、国見山の風力発電所から最も近い「豊岩浄水場」まで、蓄電池を経由して電力を供給できるようにする。

 蓄電池の設置と合わせて「第二風力発電所」の建設工事が2014年4月に始まった。第二発電所は4基で7.5MWの発電能力があり、第一発電所と合わせて最大17MWの電力を供給することができる(図6)。2015年3月に運転を開始した後に、蓄電池から浄水場まで電力を送る引込設備を建設する予定だ。

図6 「秋田国見山風力発電所」から「豊岩浄水場」までの電力供給ルート。出典:秋田市上下水道局

 国見山風力発電所は年間の平均風速6.1メートル/秒を見込んで、第一と第二の合計で年間に約4000万kWhの電力を供給できる見込みである。一般家庭で1万1000世帯分の使用量に相当する。平常時は東北電力に売電する一方、停電が発生した場合には蓄電池に充電した電力を豊岩浄水場へ送って断水を防ぐ。

 蓄電池の容量は5760kWhあって、電気自動車の日産リーフのバッテリー(蓄電容量24kWh)に換算して240台分に匹敵する規模になる。1時間あたり最大で2500kWhの電力を供給する能力がある。浄水場の中には非常用の発電機も導入する計画で、風力発電と組み合わせて水道の安定供給に役立てる。

*電子ブックレット「エネルギー列島2014年版 −北海道・東北編 Part2−」をダウンロード

2016年版(5)秋田:「日本海に洋上風力発電が広がる未来、地熱とバイオマスでも電力を増やす」

2015年版(5)秋田:「風力発電で全国トップを走り、バイオマスと水素でも電力を作る」

2013年版(5)秋田:「巨大な干拓地で風力から太陽光まで、潜在するバイオマスと地熱も豊富」

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