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» 2014年06月06日 11時00分 UPDATE

自然エネルギー:海面下の農地を守る、1000mの用水路で太陽光発電 (1/2)

新潟市の農業事業者の団体が、農地を守る用水施設のために発電設備を導入した。海面より低い農地が広がるため、ポンプ設備が大量の電力を必要とする。このうち1割以上を用水路の斜面(法面)などに設置した太陽光発電システムでまかなう形だ。

[畑陽一郎,スマートジャパン]
yh20140606Kameda_map_250px.jpg 図1 新潟市と亀田郷の位置

 「亀田郷(かめだごう)では、揚水施設と排水施設を使わなければ農業が成り立たない。これらの施設を動かすために年間600万〜700万kWhの電力を必要としている。2014年4月に完成した太陽光発電システムを使って、このうち80万kWhをまかなえると考えている」(亀田郷土地改良区農村整備課事業計画係)*1)

 亀田郷は米どころ新潟県に位置する(図1)。新潟市江南区とほぼ同じ範囲に広がり、すぐ北には新潟駅や県庁なども立地している。このため大規模な田園地域の一部は都市化されている。

 揚水施設と排水施設が必要な理由は地理的な条件のためだ。亀田郷は大河川によって作り出された輪中(わじゅう)地帯であり、約1万1000ha(東西約12km、南北約11km)の土地*2)のうち、3分の2が海面下にある。自然な水の流れにまかせるわけにはいかず、水の管理が要となる。

 西の信濃川、東の阿賀野川、南の小阿賀野川に囲まれており、川から新鮮な水を取り入れ、古くなった水を排出する必要がある(図2)。揚水施設は大規模なものが4カ所、これを補完する中規模なものが10カ所ある。排水施設は大規模なものが4カ所だ。「新潟県は単作地帯に位置するため、4月から9月の間だけ、揚水施設と排水施設を動かす。それでも先ほど挙げた電力が必要だ。太陽光発電システムで得た電力を東北電力に売電し、施設の電気料金に充てる」(事業計画係)。

*1) 土地改良区は農用地の土地改良事業を進める目的で地域の農業者により組織された団体。農業用の用水路や排水路を造成・運転・管理し、区画整備や農道整備を進める。公共性が強いため、土地改良法に基づいて設立される。亀田郷土地改良区の組合員数は4705人(2014年6月時点)。
*2) 2013年3月時点で田(約3800ha)、畑(約520ha)、農業用道路・水路など(約990ha)、合計約5300haが農業用の土地である。

yh20140606Kameda_map_540px.jpg 図2 亀田郷の範囲と水の流れ 出典:亀田郷土地改良区(エネルギー持続性フォーラム 第9回公開シンポジウムの発表資料)

農業用排水路が使えないか

 米作地帯で太陽光発電を大規模導入しようとすると、十分な面積の土地をどこに用意するのかが課題になる。そこで、農業用排水路の斜面(法面、のりめん)の利用を考えた。

 2011年8月から亀田郷土地改良区と東京大学国際高等研究所サステイナビリティ学連携研究機構(IR3S)、昭和シェル石油が共同事業として実証実験を開始。出力4kWの太陽電池モジュールを設置し、実用的な発電が可能か確認した。法面には草が生えやすく、除草費用もかさむ。そこで地表面の状態や植生の組み合わせを作り、ダミーパネルを置いて防草効果も確かめた(図3)。

yh20140606Kameda_grass_560px.jpg 図3 雑草対策試験の内容 出典:亀田郷土地改良区(エネルギー持続性フォーラム 第9回公開シンポジウムの発表資料)

 太陽電池モジュールを提供したソーラーフロンティアによれば実証実験は成功。同社のCIS薄膜太陽電池モジュールは実発電量が高いことはもちろん、部分的な影がモジュールに与える影響が少なかった。新潟県は雪が多い。実証実験の結果、雪が滑り落ちやすいことも確認できた。メンテナンスコストが低く、田園の景観を損なわないことも評価されたという。

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