20兆円の電力市場が2016年に全面開放、全国8000万超の顧客獲得競争が始まる動き出す電力システム改革(9)(1/2 ページ)

家庭を含む小売の全面自由化が正式に決まった。電気事業法の改正案が6月11日の国会で成立したことにより、政府は2016年をめどに電力小売の規制を撤廃する。巨大な市場に通信・ガス・住宅などさまざまな産業の有力企業が参入して、8000万を超える顧客の獲得競争を電力会社と繰り広げる。

» 2014年06月13日 15時00分 公開
[石田雅也,スマートジャパン]

第8回:「電力小売の全面自由化へ、6月までに法改正が決まる」

 3段階に分けて進める電気事業法の改正のうち、小売の全面自由化を盛り込んだ第2弾の法改正が国会で可決・成立した。実施時期については「2016年をめどに」と幅を持たせた表現になっているものの、第1弾の改革が順調に進めば2016年内に実施することはほぼ確実だ。

 現行の制度では、契約電力が50kW以下の小規模な利用者に対しては地域別に電力会社だけが小売を認められている。この規制部門には家庭を中心に全国で約8400万の利用者がいて、市場規模は7.5兆円に達する(図1)。国内の携帯電話の市場が約7兆円で、それに匹敵する巨大な市場が開放されることになる。

図1 電力市場と小売自由化の動き(画像をクリックすると拡大)。出典:資源エネルギー庁

 そればかりではない。すでに自由化されている企業向けの小売事業や再生可能エネルギーを含む発電事業も活発になり、全体で20兆円を超える電力市場の顧客獲得競争が2016年を境に激しさを増す。早くも市場に参入する企業が相次いでいて、小売事業が可能な新電力の登録数は2014年6月9日の時点で244社に達した。

 小売の全面自由化に伴って、電力会社を中心に構成していた事業者の位置づけも変わる。現行の電気事業法では事業者を6種類に分けている。発電・送配電・小売すべてが可能な電力会社は「一般電気事業者」、企業向けの小売が認められる新電力は「特定規模電気事業者」が正式な名称である。このほかに発電を専門にする「卸電気事業者」などが市場を形成している(図2)。

図2 全面自由化に伴う事業者の区分変更。出典:資源エネルギー庁

 これに対して全面自由化後は発電・送配電・小売の3種類に事業者を再編する予定だ。各地域のインフラになっている送配電ネットワークは電力会社が「送配電事業者」として、引き続き地域内で独占的に事業を運営していく。一方で「発電事業者」と「小売電気事業者」は電力会社を含めて対等な条件で競争する。

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