小売の全面自由化は2016年4月に実施可能、運営機関の準備が進む動き出す電力システム改革(11)(1/2 ページ)

電力の小売全面自由化を推進する中核の役割を担うのが「広域的運営推進機関」である。すでに自由化に必要な準備は進んでいて、システム開発やデータセンターの委託先も10月までに決まる。2016年4月には小売事業者がシステムを使って電力供給の変更手続きを処理できるようになる。

» 2014年07月01日 13時00分 公開
[石田雅也,スマートジャパン]

第10回:「電力の購入先変更を検討する家庭は54%、料金の安さが最大の選択理由」

 電力システム改革の第1段階は「広域的運営推進機関(略称:広域機関)」を設立して、電力会社に依存しない運営体制を全国規模で構築することが目標だ。その広域機関の設立準備と業務開始に向けた作業が着々と進んでいる。7月中旬には創立総会を開催して、組織と人員の整備に着手する(図1)。

図1 「広域的運営推進機関」の業務開始までのスケジュール(2014年6月23日時点)。出典:広域的運営推進機関設立準備組合

 広域機関を設立する前段階として、すでに1月から「設立準備組合」が活動を開始している。組合のメンバーには電力業界の新旧勢力が顔をそろえた。電力会社10社のほかに、新電力を中心とする小売事業者と発電事業者が41社も加わっている(図2)。合わせて50社を超える電気事業者が参画して広域機関の準備を進めていく。

図2 設立準備組合の参加企業(2014年6月16日時点)。出典:広域的運営推進機関設立準備組合

 まず2015年4月から電力の需要と供給を全国レベルで調整する業務を開始する予定で、主な業務は2種類に分かれる。年単位で需要と供給力を予測しながら長期的な整備を進める「計画業務」と、実際に需給状況がひっ迫した時の対策などを実施する「運用業務」である(図3)。

図3 「広域的運営推進機関」の業務内容。出典:広域的運営推進機関設立準備組合

 いずれの業務も従来は電力会社が地域単位で実施してきた。地域内で事業者間の調整が必要になったり、地域をまたがる連系が必要になったりした場合には、電力会社や新電力で構成する「電力系統利用協議会(ESCJ)」が調整役を担う。新たに広域機関の業務が始まると、全国の需要と供給を一元的に管理して、電力会社を含む事業者に指示を出しながら需給バランスを図る体制になる。

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