水道水を高く売る? 群馬の小水力発電所自然エネルギー

群馬県企業局は2014年10月、水道水を利用した小水力発電を開始したと発表した。みどり市と太田市をつなぐ送水管路の高低差を利用して発電、固定価格買取制度の買取価格よりも高く企業に電力を販売する。水の販売価格を変えることなく、収益を得る形だ。

» 2014年10月03日 07時00分 公開
[畑陽一郎,スマートジャパン]
図1 群馬県みどり市(北側)の浄水池と太田市の受水池の位置

 群馬県企業局は2014年10月、水道水を利用した小水力発電を開始したと発表した(図1)。「入札の結果、2016年3月末までの間、固定価格買取制度の買取価格*1)よりも高くサミットエナジーに電力を販売できる」(群馬県企業局)。総事業費は約1億7000万円であるため、単純計算では約10年で事業費を回収できることになる。

 ヤマトと、工藤建設工業、後藤建設、飯山千里建築設計事務所が設計・調達・建設を担当し、2013年7月に着工した。

*1) 出力200kW未満の水力発電の買取価格は1kWh当たり34円(税別)、買取期間は20年間。2016年3月までに再度入札を行う予定だ。

水道施設をそのまま利用

 発電を開始したのは新田(にった)水道発電所。新田受水池(群馬県太田市新田多村新田町)のすぐ手前にリンクレスフランシス水車を設置し、最大出力60kWを得る。年間発電電力量は41万9000kWhであり、これは一般家庭120世帯分に相当する。

図2 関連施設の位置と高低差 出典:群馬県企業局

 水源に相当するには、渡良瀬川が山間部から平野部に流れ出す位置に置かれた新田山田水道浄水池(群馬県みどり市大間々町桐原)。図2の中央上にある赤丸だ。渡良瀬川からポンプ取水し、沈砂池や混和池、砂ろ過池、浄水池を通じて水道水を作り出す設備である。製造能力は1日当たり4万2300m2

 浄水施設を出た水道水はみどり市(図中央上のオレンジ色の丸)と太田市(図中央下のオレンジ色の丸と図中央右下のオレンジ色の丸)の3カ所に向かう。水道水は直線距離にして約12km離れた新田受水池まで流れ下る形だ。この高低差54.97mを使って、毎秒最大0.153m3の水を発電に使う。

 「新田受水池の手前で送水管路を二重化(分岐)させた。工事期間中、水道水の供給を止めることができないためだ。今後、発電所の保守管理をする場合も、管路を切り替えることで送水を止めなくて済む」(群馬県企業局)。

【訂正】 記事の掲載当初、第3段落で「新田(にった)水力発電所。新田受水池(群馬県太田市新田村田町)」としておりましたが、これは「新田(にった)水道発電所。新田受水池(群馬県太田市新田多村新田町)」の誤りでした。第2段落で「1年間で完成させた」としておりましたが、正確には「2013年7月に着工した」です。お詫びして訂正いたします。上記記事はすでに訂正済みです。記事タイトルに「水道水を高く売る?」とありますが、水の販売価格自体は変わっておりません。「群馬県企業局は市町村に対して水道用水を販売している。新田水道発電所の建設によって、水道用水の価格が変わることはない」(群馬県企業局)。要約の末尾に「水の販売価格を変えることなく、収益を得る形だ」と追記しました。(2014年10月3日)

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